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看護師を目指す際に利用できる奨学金・助成金・給付制度とは?条件や内容を解説

看護師 奨学金 助成金 給付制度

近年、社会人から看護師を目指す方が増加しています。その背景には、自治体や団体による手厚い奨学金や助成金制度が大きく影響していると考えられます。

これらの制度は、社会人から看護師を目指す方だけでなく、現役で目指す方も活用できる制度が充実しており、 看護師に関わる奨学金や助成金の種類はさまざまです。

また、看護師になった後、さらなるキャリアアップのために利用できる助成金もあります。

そこで本記事では、看護師が利用できる奨学金・助成金の種類や各給付制度の内容、注意点などについて詳しく解説します。

※各制度内容や条件は自治体や団体によって異なり、また変更や改正が随時行われる可能性がありますため、詳細は各自治体などのHPをご確認ください。

1.看護師になるために必要な学費とは?

看護師になるためには、いったいどのくらいの学費がかかるのでしょうか。看護師になるためには、専門学校と大学の2つのルートがあります。それぞれの学費について詳しく説明します。

1-1.専門学校

令和2年度「学生・生徒納付金調査」によると、専門学校の初年度の学費は平均108万6,000円です。最高額は180万8,000円、最低額は46万円でした。費用の内訳は以下のとおりです。

  • 入学金:178,000円
  • 授業料:679,000円
  • 実習費:37,000円
  • 設備費:131,000円
  • その他:61,000円

多くの専門学校は3年制のため、総額で200万~300万円程度の学費がかかることが一般的です。

出典:公益社団法人 東京都専修学校各種学校協会「令和2年度 学生・生徒納付金調査」

1-2.大学

一方、4年制大学で看護師資格を取得する場合の学費はさらに高額になります。令和5年度の私立大学における初年度学生納付金等の平均額は、下記のとおりです。

  • 入学金:約26万円
  • 授業料:約100万円
  • 施設設備費:約24万円

初年度は約150万円で、2年目からは授業料と施設設備費のみのため、4年間で約520万円です。このように、専門学校と比べて大学は学費が高くなる傾向があります。

出典:文部科学省「令和5年度 私立大学入学者に係る初年度学生納付金等平均額(定員1人当たり)の調査結果について

2.貸与型の看護師免許取得支援制度

貸与型の看護師免許取得支援制度とは、看護師を目指す学生が学費や生活費を「借りる」形式で支援を受ける制度です。

在学中は返済の必要がなく、卒業後に一定期間内で返済を行います。貸与型の看護師免許取得支援制度の種類とそれぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

2-1.日本学生支援機構の貸与奨学金

日本学生支援機構(JASSO)の貸与奨学金は、無利子の「第一種奨学金」と有利子の「第二種奨学金」があります。

第一種奨学金は、学業成績が特に優れている学生や経済的に厳しい状況にある学生を対象とした無利子の奨学金です。貸与月額は、通学形態や学部により異なります。

第二種奨学金は、第一種よりも審査基準が緩やかで、より広範な学生が利用できる有利子の奨学金です。貸与月額は、大学と短期大学、専門学校が2万円から12万円の範囲で、1万円刻みで選択可能です。

●日本学生支援機構のホームページ
日本学生支援機構「貸与奨学金(返済必要)」

2-2.看護師等修学資金貸与事業

看護師等修学資金貸与事業は、看護師や助産師、保健師を目指す学生に対して経済的支援を行う制度で、修学資金を無利子で貸与します。ここでは、東京都における看護師等修学資金貸与事業を紹介します。

【対象者】
将来的に東京都内で看護職として一定期間勤務する意思があり、成績優秀で心身健全であるなどの条件を満たした看護師養成所、助産師養成所、または保健師養成所に在学中の学生

【貸与金額】
月額25,000円・50,000円・75,000円・100,000円のいずれか
※卒業後に所定の医療機関で5年または7年間勤務することで全額または一部が免除されます

また、令和7年4月施行の「東京都看護師等修学資金制度の改正について」により、返還免除額の拡大と返還免除条件の緩和が行われます。

返還免除額の拡大内容の中でも、全額免除となるのは以下の通りです。

貸与月額免除の条件免除額(変更前)免除額(変更後)
5万円都内施設(5年間従事)25,000円×貸与月数50,000円×貸与月数
7.5万円指定施設(5年間従事)50,000円×貸与月数75,000円×貸与月数
10万円指定施設(7年間従事)75,000円×貸与月数100,000円×貸与月数

返還免除条件の緩和については、従来は看護業務上の理由により死亡または心身の故障によって看護業務に従事できなくなったことが条件でしたが、法改正により看護業務上の理由ではなくとも免除が可能になります。

●東京都保健医療局のホームページ
東京都保健医療局「看護師等修学資金貸与事業」

出典:東京都保健医療局「東京都看護師等修学資金制度の改正について(令和7年4月施行)」

2-3.病院奨学金

病院奨学金とは、病院が看護師や医療技術者を目指す学生に対して学費を支援する制度です。将来的に特定の病院で一定期間勤務することを条件に、学費を無利子で貸与します。多くの場合、卒業後にその病院で数年間(通常3〜5年間)勤務すれば、奨学金の返済が免除されます。

【貸与金額】
月額30,000~50,000円程度、または年額60~70万円程度
※病院によって異なります

2-4.(准看護師向け)日本看護協会の奨学金

日本看護協会は、准看護師向けの貸与型の奨学金として「看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金」を2009年に創設しました。

無利息の貸与型であり、就業先や居住地などの条件がないことが特徴です。また、他の奨学金との併用も可能で、学費や生活費に活用できます。

【貸与金額】
年額36万円または48万円
※選択した金額が一括で指定口座に振り込まれます

【貸与期間】
在学中の1年または2年間

【応募資格】
・日本看護協会の会員であること(会費納入済み)
・看護師学校養成所2年課程(通信制)に在籍していること

新規入会手続きは毎年10月から可能とされていますが、詳細については都道府県看護協会に問い合わせましょう。

●日本看護協会のホームページ
看護師学校養成所2年課程(通信制)進学者に対する奨学金

3.給付型の看護師免許取得支援制度

給付型の看護師免許取得支援制度とは、返済不要の資金を提供する制度です。給付型の看護師免許取得支援制度の種類とそれぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

3-1.日本学生支援機構の給付奨学金

日本学生支援機構(JASSO)の給付奨学金は、経済的に困難な学生を支援するための返済不要の奨学金制度です。

【支援対象者】
学ぶ意欲があり、経済的に進学が難しい状況にある学生
※成績のみではなくレポートなどで意欲確認があり、学ぶ意欲がない場合は支援が打ち切られることがあります

【支給金額】
毎月7,300~75,800円
※卒業時期まで毎月支給され、支給額は世帯の所得金額に基づく区分、学校の設置者(国公立・私立)、および通学形態(自宅通学・自宅外通学)によって異なります。
※貸与型の看護師免許取得支援制度と併用できます

●日本学生支援機構のホームページ
日本学生支援機構「給付奨学金」

3-2.(雇用保険の加入者向け)専門実践教育訓練給付金

専門実践教育訓練は、労働者のキャリアアップや再就職を支援するための教育訓練費用の一部を補助する制度です。

対象となる教育訓練は専門学校や大学、各種スクールなどが提供するもので、厚生労働省が指定する講座に限ります。

【支給対象者】
・始めて受給する場合
受講開始日までに雇用保険の被保険者の期間が通算2年以上あるもの
在職中、もしくは離職後1年以内であること
・受給が2回目以降の場合
前回の受講開始日から、雇用保険の被保険者の期間が通算3年以上あるもの
在職中、もしくは離職後1年以内であること

【支給金額】
教育訓練費用の最大50%(年間上限40万円)
※看護師資格においては、資格取得かつ訓練修了から1年以内に雇用保険の被保険者として雇用された場合は、さらに受講費用の20%(年間上限16万円)が支給されます。

●厚生労働省のホームページ
厚生労働省「教育訓練給付制度」

3-3.ひとり親向け)自立支援教育訓練給付金

ひとり親向けの自立支援教育訓練給付金は、母子家庭の母親や父子家庭の父親が自らの能力を向上させるための教育訓練の費用の一部を補助する制度です。教育訓練を受講し、修了した場合に費用が支給されます。

対象講座は、雇用保険の教育訓練給付の指定講座や、地域の実情に応じて都道府県等が定めた講座です。

【支給金額】
教育訓練を受講し、修了した場合に費用の60%が支給
※雇用保険の一般教育訓練給付対象の場合:最低12,001円から最大20万円
※専門実践教育訓練給付対象の場合:最大160万円

●こどもの家庭庁のホームページ
こども家庭庁「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について」

3-4.(ひとり親向け)高等職業訓練促進給付金

高等職業訓練促進給付金は、母子家庭の母親や父子家庭の父親が看護師や介護福祉士などの資格を取得するために、6ヶ月以上の訓練を受ける場合に支給される給付金です。

【支給金額】
・市町村民税非課税世帯の場合:月額100,000円
(課程修了前の12ヶ月間は月額140,000円に増額されます。)
・市町村民税課税世帯の場合:月額70,500円
(課程修了前の12ヶ月間は月額110,500円に増額されます。)
※職業訓練修了後は非課税世帯に50,000円、課税世帯に25,000円が支給されます。

【支給期間】
訓練期間全体で最長4年間

●こどもの家庭庁のホームページ
こども家庭庁「母子家庭自立支援給付金及び父子家庭自立支援給付金事業について」

4.看護師資格取得後のキャリアアップに使える助成金

看護師資格の取得後は、認定看護師や専門看護師の資格を取得することでキャリアアップにつながります。看護師のキャリアアップに利用できる助成金の種類とそれぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

4-1.認定看護師教育課程奨学金

認定看護師教育課程奨学金は、認定看護師教育課程や特定行為研修を受講する看護職を支援することを目的とした日本看護協会提供の奨学金制度です。

【応募資格】
・保健師、助産師、または看護師の免許を所持している
・認定看護師教育課程に在籍している、または認定看護師の資格を持ち特定行為研修を受講している
・奨学金を受けた後に、保健医療分野の現場で2年以上勤務する意思がある

【貸与金額】
年額120万円以内で、一括で支給
※地域、年齢、所得に関する制限はなく、他の奨学金や給付金との併用も可能です

●日本看護協会のホームページ
日本看護協会「認定看護師教育課程奨学金」

4-2.専門看護師(CNS)奨学金助成

専門看護師(CNS)奨学金助成は、看護の質的向上を目指し、特定の専門分野で優れた看護師の育成を支援するための奨学金です。奨学金は60万円で、前期分として6月中旬に30万円、後期分として10月中旬に30万円が支給されます。

助成対象となる専門分野は以下の14分野です。

がん看護 ・精神看護 ・地域看護 ・老人看護 ・小児看護
・母性看護 ・慢性疾患看護 ・急性・重症患者看護 ・感染症看護
・家族支援 ・在宅看護 ・遺伝看護 ・災害看護 ・放射線看護

応募資格には、看護系大学院修士課程の最終年次へ進級予定であること、専門看護師認定審査の受験資格を満たす見込みであること、認定を受けた後に2年以上専門分野の臨床に従事することなどがあります。

木村看護教育振興財団「専門看護師奨学金助成を受ける手順・募集要綱」

5.他業種から看護師を目指しやすくなってる・需要も高い

看護師は、国を挙げて人材不足の解消に向けて各種制度が創設されているため、他業種から目指しやすくなっています。

2015年に発表された「看護師養成所における社会人経験者の受け入れ準備・支援のための指針」では、入学希望者への情報提供、学習面・経済面での支援、学業と家庭の両立支援、就職支援など、幅広いサポートが示されています。

また、厚生労働省の「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」に記載されている有効求人倍率の推移からは、看護師の需要の高さが見て取れます。

全職業の有効求人倍率は、2018年度の1.46から2020年度に1.01まで低下しましたが、その後2022年度には1.19まで回復しています。一方、看護師・准看護師の有効求人倍率は、2018年度の2.35から2020年度に2.05まで低下しましたが、2022年度には2.20まで回復しました。看護師の有効求人倍率が高い状態が続いていることは、看護職の需要が高いことを示しています。

出典:厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況」
出典:厚生労働省「看護師養成所における社会人経験者の受け入れ準備・支援のための指針」

6看護師になりたい社会人が利用できる3つの奨学金制度

他業種から看護師を目指す社会人は、以下3つの奨学金制度を利用できる可能性があります。

  • 日本学生支援機構(JASSO)奨学金
  • 都道府県や市町村による看護学生向けの奨学金(看護師等修学資金貸与事業、専門実践教育訓練給付金)
  • 各医療機関による看護学生向けの奨学金(病院奨学金)

複数の奨学金制度を併用することで、費用面の課題をクリアできる可能性が高まります。

7.まとめ

日本は、看護師不足を解消するべく、看護学生や他業種の社会人向けの奨学金・給付金制度を数多く創設しています。本記事では、看護師を目指す際に利用できる奨学金・給付金制度の種類や特徴などを解説しました。

看護師を目指す際に費用がボトルネックとなる場合においても、本記事で紹介した制度を活用することで、看護師を目指せるようになる可能性があります。看護師を目指している方は、自身が利用できる奨学金・給付金制度をチェックして、しっかりと活用しましょう。

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