看護師の申し送りの目的とは?現状や負担を軽減するためのポイント
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看護師にとって、日勤と夜勤でシフトが変わる際に患者の情報や状態について情報共有をする申し送りは非常に大切なことである一方で、現場の看護師の負担となっているという事実があります。
実際、申し送りの廃止に向けた見直しや研究、現場での試行錯誤も行われています。
しかし、患者の正確な状態を知るために必要な業務の一環として、廃止には至っていないのが現状です。
そこで本記事では、負担ではあるものの、患者にとって重要であるから廃止できない現状に対し、少しでも看護師の方々の申し送りの負担を減らすポイントなどを解説します。
1.看護現場における申し送りとは?
看護現場における申し送りは、日勤と夜勤で看護師が交代するタイミングで、入院患者の状況、体調の変化、医師からの指示内容、留意事項などを伝え、情報共有を図ります。
特に新規入院患者のことや検査予定、体調の変化など新たな情報がある場合は丁寧に伝え、患者への的確な看護提供のために欠かせないものです。
また、ミスをしないため、しっかり情報を共有するためでもあります。
日常的に業務の一環として行っている申し送りですが、そもそも行う理由や目的について深く意識しているかどうかは、人によって違います。
臨床現場の経験年数や重ねてきたキャリアによって、意識に違いがあることが出ることもあるようです。
2.看護師の申し送りの現状
業務上、申し送りが患者の情報共有のために大切なことは看護師も理解していることと思います。その一方で、業務の中で大きな負担になっているのもまた事実です。

厚生労働省の調査によると、業務の中で「看護師間の申し送り」が4番目に多い4.8%という結果でした。
看護師の業務の中で、数値上はそこまで大きなものではないと感じるかもしれません。しかし、毎日行うとなれば、それだけ他の業務に割ける時間が少なくなるだけでなく、患者からのナースコールなど不測の事態にスムーズに対応しづらくなることもあります。
申し送りには一定の時間が必要となるため、それだけ負担となっている現状もうなずけます。
また、申し送りを伝える側はその日の退勤時間が迫っています。
申し送りで伝えることが多くなったり、時間がかかったりするとその分退勤時間が遅くなり、場合によっては残業や過重労働が起こりやすくなる原因になることもあるのです。
申し送りの時間は5~15分が多いでプが、長いところでは30分~1時間かかることもあるでプ…。
病院によって色々なんでぷね!
参照:厚生労働省「医療従事者の需給に関する検討会第3回看護職員受給分科会(看護職員需給推計関係資料)」
3.看護師の申し送りが大切な理由
看護現場において、申し送りは看護師にとって負担になっている一面がある一方、患者に質の高いケアを継続的に行うために欠かせない重要な取り組みでもあります。
本章では、申し送りをする目的について紹介します。
3-1.患者の体調や要望を正確に把握するため
患者の体調や要望、注意事項は日々変化します。
新たに入院して来た患者もいれば、注意深く観察する必要のある患者など、様々な状況を正確に把握することが、看護ケアのために欠かせないためです。
入院してきたばかりの患者さんは自分の怪我や病気、新しい場所で生活することに緊張しているでぷ。
しっかりと申し送りを行うことで、次の担当の看護師さんと患者さんがスムーズに接することができるんだぷ。
これは患者さんの不安を解消にもつながるんでぷよ!
3-2.検査や処置の準備や対応をするため
患者によっては、手術を控えていたり、何らかの検査や治療を控えていたりするケースも珍しくありません。
手術などの準備や、検査処置など、必要な対応を確認して速やかに対応することが、患者だけでなく、医療サービスに欠かせないものとなります。
3-3.医師からの指示を共有するため
医師は、患者の容態や治療に応じて食事や投薬、処置など様々な指示を出します。
その指示を看護師の間で共有し、治療がうまく進むようにサポートするのが看護師の仕事と言えるでしょう。
申し送りによって情報を共有し、細やかな対応ができるように備えるのです。
4.看護師が申し送りをスムーズに行うためのポイント
シフトの交代時に毎回行われる申し送りですが、時間も人員も限られている以上、できるだけスムーズで確実に行うことは、業務の適正化や看護師の負担軽減のためにも大切なことです。
本章では、看護師が申し送りをする際にスムーズに行うためのポイントを解説します。
4-1.重要事項を簡潔に伝える
申し送りをする際、全ての事項を1から10まで説明していると時間がいくらあっても足りません。
特に配慮が必要な患者や、手術や検査などの特記事項がある患者の情報など、優先して伝えなければいけない患者から簡潔かつ的確にまとめ、伝えられるようにしましょう。
4-2.患者に対して行った処置はまとめておく
患者に対して行った処置や、これから行う予定の措置はまとめておき、次のシフトの看護師がスムーズに対応できるように伝えることが大切です。
日頃から行っている措置とは別のことをおこなった場合は、確実に伝えるように心がけるといいでしょう。
4-3.事実を中心に伝える
申し送りでは、患者の身に起こった体調変化やその対応など、事実を中心に客観的な視点で伝えることが求められます。
看護師もケアなどを行う上で、様々な感情や考えを持つことがありますが、あくまでも患者に対する対応は人としての感情や優劣をつけることなく、平等であることが大切です。
事実を端的に伝え、自分の推測や感情を混同することのないようにしましょう。
5.申し送りに活用できるコミュニケーション方法「SBAR」
申し送りを的確な情報共有の手段として活用する「SBAR」が注目を集めています。
それぞれ、「状況(Situation)」「背景(Background)」「評価(Assessment)」「提案(Recommendation)」の頭文字を取って名付けられたものです。
事象が発生した場所や患者の名前、報告した理由や現在の状態を伝えます。
患者の病名やバイタル、行った処置、バイタル、既往歴を簡潔に伝えます。
発生している問題や原因について伝えます。
原因や状況に対し、患者が要求していることや医師の指示、取るべき処置を伝えます。
看護ケアに必要な情報を簡潔かつ客観的にまとめ、所要時間の削減を図りつつ、ミスがないよう現場でしっかり情報が共有できる方法で、アメリカの病院で行われていた看護師教育から生まれました。
この方法が評価されるようになり、近年日本の病院でも取り入れるところが増えているのが現状です。
6.効率的に申し送りをするための具体策
では、現場で効率的に申し送りするための具体策はどうしたらいいのでしょうか。
現場で工夫できる方法についてまとめました。
6-1.端的に申し送りができるようトレーニングする
新たに入職した看護職員や、異動で他部署から来た職員に対し、申し送りの練習としてロールプレイを取り入れるとより実践的なスキルを習得できます。
ロールプレイの際には、カルテの情報の中でも伝える必要があるキーワードを念頭に置き、要点をまとめるよう心がけることが大切です。この練習を繰り返し行うことで、申し送りの前に頭の中でまとめることができ、スムーズに伝えられるようになります。
また、既に働いている職員に対しても、定期的に申し送りの内容についてフィードバックを行い、改善点を見つけることができます。
申し送りはカンファレンスではなく、情報を伝える場なので端的に伝えることを意識すると時間を削減することができるでぷ!
6-2.記録する内容を整理する
電子カルテを導入している病院が増えていますが、メモ欄や特記事項欄に多くの情報を入力しようとする傾向があります。情報過多にならないよう、必要事項のみ記入するようルールの明確化と整理を行うように見直してみましょう。
また、患者のバイタルサインなどに大きな変化がない場合は記録にとどめ、申し送りでは省略することも一案となります。
6-3.そもそもで書く回数を減らす
よく使う文章やフレーズをテンプレート化することで、入力時間を短縮することが可能です。
電子カルテの場合、パソコンのように定型文を登録することができるため、「所見:発熱: 咳:」などのように頻度の高い言葉を定型文として登録し、すぐに出てくるようにしておくことで作業効率を高めます。
また、キーボードを使わず音声入力機能を活用することで、タイピングの手間を省くことができる可能性もあるでしょう。
電子カルテで入力する場所と内容を統一化し、そもそも手書きで記入する回数自体を減らすことで、各回数も減らすことができます。
6-4.記録するタイミングを工夫する
看護記録は、患者との関わりの中でリアルタイムに行うことが理想ですが、忙しい状況下では難しい場合もあります。
その場で入力できない場合は、入力する時間を取れるよう看護師間で調整したり、タブレットなどを携帯してナースステーションに戻らなくても入力できる環境を作ったりすることも有効です。
7.看護師の申し送りで使いたいテンプレート
看護師の申し送りで使いたいテンプレートを、新規患者の場合と入院患者の場合に分けてまとめました。
診療科や患者の年齢層、多い症状などによって必要な項目を職場で検討し、取捨選択して利用すると、より的確で簡潔なテンプレートへブラッシュアップできるでしょう。
7-1.新規患者の場合
・基本情報(患者氏名、年齢、性別、入院日、主訴、診断名、入院時バイタル、アレルギー有無、既往歴、家族歴、生活習慣)
・現状(現状の身体状態(意識レベル、呼吸状態、循環状態など)、疼痛の有無や部位・強度、対応)
・排泄(尿量、便通、排泄介助の有無)
・食事(食事形態、摂取量)
・体位(保清、褥瘡、浮腫など)
・治療内容(投薬、常用薬、頓服薬、点滴など)
・処置(輸血、吸引、ドレナージ、その他)
・検査(予定されている検査)
・看護計画(優先すべき看護問題、目標、実施内容:
・評価
・その他(家族状況、家族からの要望、特記事項)
・引き継ぎ事項(今日行ったこと、明日の予定、注意点)
7-2.入院中の患者の場合
・患者情報(氏名、年齢、性別、入院日、病室番号、主治医)
・意識状態: (清明、やや興奮、傾眠など)
・バイタルサイン(血圧、脈拍、呼吸数、体温)
・疼痛(例:なし、軽度、中等度、重度、部位、緩和策)
・呼吸 (例:苦しくない、やや苦しい、呼吸困難、酸素療法の有無)
・循環: (例:末梢冷えなし、浮腫なし、心音リズム整、不整脈の有無)
・排泄(尿量、尿色、便通、排便回数、排便性状)
・栄養(食欲、食事摂取量、特別な食事制限)
・皮膚 (例:創傷の有無、褥瘡の有無、皮膚の色調、湿潤度)
・活動性 (例:ベッド上、車椅子、歩行可能、歩行補助具の使用)
・精神状態 (例:落ち着いている、不安、抑うつ、幻覚、妄想)
・治療・処置(投薬 (薬剤名、用法、用量、投与経路)、点滴 (点滴名、滴下速度、残量)、輸血 (輸血の種類、量、反応)、検査(予定されている検査、結果)、処置 (ドレナージ、吸入療法、褥瘡ケアなど)
・看護計画・問題点(看護計画(今日行うべきこと、目標)、問題点(解決すべき問題、看護診断)、家族への説明 (説明内容、家族の反応))
・その他(特記事項(アレルギー、宗教、文化的背景、家族構成など)、交代時の注意事項 (観察すべき点、注意すべきこと))
8.まとめ
以上、看護師の申し送りの現状や効率よく行うためのポイントを解説しました。
申し送りは看護師の業務をスムーズに行うために欠かせないものである一方で、工夫と伝え方次第では負担を減らし、患者の看護ケアなど他の業務へ割く時間を増やすこともできます。
日常業務をスムーズに滞りなく行うための一助となれば幸いです。
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