看護実習は辛い?実習期間やスケジュール、乗り越え方などを解説

看護実習は、将来看護師として活躍するための重要なステップです。

看護実習の現場では、未来の看護師たちを育てていくため、実践に基づいた知識や技術を与えるため、様々な指導を行ってくれます。

しかし、学科で学んだことを初めて医療の現場で実践していく看護学生は緊張の連続です。また、「看護実習はつらい」や「睡眠時間がほとんど取れない」などの話を聞くこともあり、不安に感じている方も多いでしょう。

そこで今回は、そんな不安が少しでも減るように看護実習をつらいと感じた際の乗り越え方や看護実習の内容、期間、スケジュールなど細かく紹介していきます。

1.看護実習とは?

看護実習は、看護師を目指す上で単位修得が必要となるカリキュラムの一環です。実際に医療機関で看護職者が行う実践の中に看護学生が入り、看護職者の立場で看護行為の在り方を学びます。

まずは、看護実習の目的や内容について見ていきましょう。

1-2.看護実習の目的

看護実習の目的は、看護学生が科目で学んだ知識や技術、振る舞いの統合を図りつつ、実際に医療の現場で看護職者としてケアを実践し、学科で学んだことを検証しながら理解を深めることが目的です。

看護の方法を「知る・分かる」から「実践できる・使うことができる」という段階に到達するため、看護実習は必要な過程になります。

また、病院や施設、在宅、地域など様々な場で看護を学ぶ事で、多職種との連携に必要な能力を養います。

さらに、看護に必要なコミュニケーション能力や責任感、判断力、緊張感など、実際の医療現場でしか得られないことを経験する場でもあります。

参照:「大学における看護系人材養成の在り方に関する検討会 第二次報告」|文部科学省

1-3.看護実習の内容

看護実習の内容は、以下の3つに大別できます。

  • 基礎実習
  • 領域別実習
  • 統合実習

それぞれ詳しく見ていきましょう。

基礎実習

基礎実習は、講義で学んだ知識や技術が実際の医療現場でどのように生かされているのか把握し、看護師として必要な基礎知識を培います。

基礎実習には「基礎Ⅰ実習」「基礎Ⅱ実習」があり、基礎Ⅰ実習では医療現場の見学が主な実習内容です。具体的には、病棟で働く看護師を見て、日常生活援助の体験や環境整備などを行います。

一方、基礎Ⅱ実習は、2週間の実習期間中のうち、1人の患者の担当となります。カルテや患者の話から必要な情報を収集し、アセスメントから全体像を把握します。そして、対象の問題点を明確にし、解決するための看護計画書を作成した後、ケアを実施していきます。

領域別実習

領域別実習は、対象者の異なる以下の6分野について、実際に領域ごとの患者と関わり、それぞれに必要な看護の知識やスキルを学びます。

  • 成人看護学実習
  • 老年看護学実習
  • 小児看護学実習
  • 母性看護学実習
  • 精神看護学実習
  • 地域・在宅看護学実習

たとえば、成人看護学実習で対象となるのは15歳~64歳までの外科系・内科系疾患で入院する患者であるのに対し、老年看護学実習では75歳以上の患者が対象となります。

また、領域別実習では基本的に6~8名の実習生と1~2名の講師が1チームとなり、グループ形式で実習を進めていくこともポイントです。

統合実習

統合実習では、看護学校で学んだ知識や技術などを、実際の医療現場で役立てられるよう実践力を磨きます。

チームで複数の患者を担当し、メンバーと協力しながら看護計画の立案やケア、時間管理などを行います。

また、統合実習では夜間実習も行われるため、実際に看護師として働いているときの様子をイメージしやすくなることもポイントといえるでしょう。

2.看護実習期間と時期(修業年数別)

看護実習は3年制学校なのか、4年制大学なのかによって期間と時期が変わります。

また、学校によっても期間や時期が異なるため、あくまで参考程度にご覧ください。

2-1.【3年制学校】看護実習期間と時期

3年制学校の看護実習期間と時期をまとめた表は以下のとおりです。

学年実習内容実習期間実習期間
1年生基礎Ⅰ実習1週間1週間
基礎Ⅱ実習2週間2月頃が多い
2年生領域実習8週間8週間
3年生10週間5月~11月
統合実習2週間11月

3年制学校の看護実習は、1年次に基礎Ⅰ実習・基礎Ⅱ実習の両方が行われます。その後、2年次、3年次で領域実習と統合実習を実施するのが一般的です。

ただし、領域実習では6つの分野を学ぶ必要があるため、ほかの実習内容に比べて期間が長く、2年次から3年次をまたぐことが多いでしょう。

2-2.【4年制大学】看護実習期間と時期

4年制大学の看護実習期間と時期をまとめた表は以下のとおりです。

学年実習内容実習期間実施時期
1年生基礎Ⅰ実習1週間9月~
2年生基礎Ⅱ実習2週間5月~7月
3年生領域実習2~3週間×610月~
4年生~7月
統合実習2週間9月~

4年制大学の看護実習は、3年制大学の看護実習のスケジュールと比較してゆとりがあります。

3年制学校の場合、1年の段階で基礎Ⅰ実習・基礎Ⅱ実習が行われるのに対し、4年制大学の場合は1年次で基礎Ⅰ実習、2年次で基礎Ⅱ実習を行うのが大きな違いといえるでしょう。

3.看護実習期間中のスケジュール例

看護実習は、3年制学校も4年制大学も共通して1年次から始まります。実習期間中にどのようなスケジュールで過ごすのか気になる方も多いでしょう。

ここでは、看護実習期間中の1日と1週間のスケジュール例を紹介します。

1日のスケジュール例

7:00
実習先病院到着、着替え
8:00
実習開始、実習計画の確認
8:30
朝礼参加、申し送り
9:00
環境整備、バイタルサイン測定、患者の病棟へあいさつ
10:00
看護計画に基づき、受け持ち患者のケア
11:00
実施したケアや患者の様子を実習指導者へ報告
11:30
患者への配膳、食事介助
12:00
指導者への報告・記録
12:30
昼休憩
13:30
バイタルサイン測定、看護ケア
15:00
指導者への報告・記録、学生カンファレンス
15:30
患者さんへの挨拶
16:00
実習終了、実習指導者、病棟看護師へあいさつ
17:00
大学へ移動し勉強開始
18:00
帰宅
20:00
翌日の実習記録の作成
23:30
就寝

実習とはいえ、命を預かる環境であり常に緊張感があります。さらに、スケジュールもタイトであることが多いため、自己管理を徹底することも大切です。

1週間のスケジュール例

曜日概要内容
月曜日実習開始 オリエンテーション医療機関の設備や環境の説明 病棟見学 チームカンファレンスへの参加 看護ケア見学 受け持ち患者の情報収集
火曜日受け持ち開始環境整備 受け持ち患者のバイタル測定実施 看護ケア見学
水曜日受け持ち環境整備 受け持ち患者のバイタル測定実施 看護ケアの実施 実習グループでのカンファレンス 実習指導者からのフィードバック
木曜日
金曜日学内実習実習指導者からの個別・グループ指導 翌週に向けた情報収集
土曜日休日1週間の復習 看護過程の記録 翌週の行動計画の作成 翌週の予習 休息・リフレッシュ
日曜日

看護実習は基本的に月曜日から始まります。基本的に月曜日から木曜日までは病院実習、金曜日は学内実習となることが一般的です。

必ずしもスケジュール通りに進むとは言い切れませんが、大まかなスケジュールを把握したうえで実習に参加することで、実習の環境に早く慣れることができるでしょう。

4.先輩看護師からのアドバイスあり!看護実習での大変なこと・辛いこと6選

先輩看護師などから、

「看護実習は大変なこと・辛いことがたくさんある」

といったことを聞くこともあり、不安になっている方も多いでしょう。

ここでは、看護実習でどのようなことが大変・辛いと感じやすいのか、またそんな時にどう対応すべきなのか、先輩看護師の声をもとに紹介していきます。

4-1.指導者が厳しい

看護現場は人の命を預かる場であることから、指導者の対応も厳しくなる傾向にあります。

実際に、指導者の対応が怖い、怒っているように感じるなど、つらい気持ちになることも少なくありません。

また、常に迅速かつ冷静な対応が求められるため、指導者が故意に怖い対応をしようとしていなくても、厳しいと感じることがあるでしょう。

【先輩看護師からのアドバイス】

・指導者から言われたことを素直に聞き入れるようにする
・質問するときは要点を整理して聞く、忙しそうなときは話しかけない
・報告・連絡・相談を徹底する

4-2.看護記録やレポートを付けるのが大変

看護実習では、実習記録や看護記録など、さまざまな記録を作成しなければなりません。

単に記録をつけるだけでなく、自分自身の考えや見解も記載する必要があるうえに、誤字・脱字のチェックも必要であることから、作成に時間がかかります。

慣れないうちは記録を作成するのに予想以上に時間がかかり、大変に感じることがあるでしょう。

【先輩看護師からのアドバイス】

・後回しにせず、記憶が新しいうちに作成する
・実習中に記録に必要な情報を簡単にメモしておく
・完結に根拠に基づいて書く
・すべての情報を完璧に書くのはむずかしいため、要点を抑えて書く
・移動時間など隙間時間を活用して書き進めておく

4-3.睡眠不足が続く

看護実習は1日を通してハードなスケジュールであることに加え、看護記録やレポートを作成しなければならず、忙しさのあまり睡眠時間が短くなるケースも少なくありません。

また、緊張やストレスで眠りが浅くなり、疲れた状態で看護実習に参加するといった状況が辛いと感じる要因になることもあります。

【先輩看護師からのアドバイス】

・休みの日にしっかりと休息をとる
・睡眠時間が短くなる分、好きなものを食べる、好きな音楽を聴くなどで気分転換する
・その日の振り返りや記録の要点を実習先でまとめ、帰宅したらすぐに取り掛かる

4-4.コミュニケーションがうまく取れない

患者との会話が続かない、要求が多すぎて対応できないなど、患者とのコミュニケーションに悩むケースもあります。

未熟な実習生を警戒して、厳しい対応をとる患者も少なくないため、ストレスに感じる実習生が多い傾向にあります。

【先輩看護師からのアドバイス】

・相手の思いをくみ取りながら話す、相手のペースに合わせて話す
・話が膨らむように、「はい」「いいえ」で終わらない開いた質問を行う
・記録を作成するのに質問は必須だが、情報収集のための質問ではなく、相手の話したいことは何なのかという点を考えながら話をする
・敬語で話す、誠実に対応する、笑顔を忘れない
・沈黙も受け入れる

4-5.事前学習でやることが多い

事前実習とは、受け持っている患者の疾患についてあらかじめ学習する、看護手順を確認しておくといったことが挙げられます。事前学習が足りず、処置の必要性が説明できない場合は実践させてもらえない場合があります。

しかし、事前学習でやらなければならないことが多く、復習や記録などにも追われて、負担に感じる実習生も少なくありません。

【先輩看護師からのアドバイス】

・分野ごとに確認する可能性の高い採血やバイタルなどの基本・異常データは見やすくまとめておく
・完璧にしようとしすぎない
・簡潔にまとめるよう心掛け、担当する診療科で多い疾患や治療などポイントを絞って勉強する
・事前学習の内容をメモにまとめて、現場ですぐに確認できるようにしておく
・看護計画に入れている処置などは、急に実践する場合もあるので必要性や方法を明確にしておく
・付箋やインデックスを活用して、必要な箇所を見つけやすく

4-6.実際に患者をみると辛くなる

実習先によっては、重症の患者や難病の患者に対応する機会もあるでしょう。

実際に、「難病の子どもを看るのが辛かった」「治療で苦しんでいる患者さんを看ると悲しい気持ちになった」といった経験談も少なくありません。

【先輩看護師からのアドバイス】

・周囲の人や実習の担当講師に話を聞いてもらう
・辛いと感じたときは自分の好きな音楽を聴いたり、好きなものを食べたりと気持ちを切り替えるよう心掛ける
・冷静に向き合えるようになると信じて、実習に取り組む

5.看護実習を乗り越える方法

看護実習は、体力面・精神面ともに辛いことが多くあります。しかし、看護師として活躍するために必要な経験であり、状況に応じて対処しなければなりません。

ここでは、看護実習を乗り越える方法を解説します。

5-1.実習生同士で支え合って取り組む

看護実習は辛いと感じる実習生が多いですが、一人だけが辛い思いをしているわけではありません。

同じ環境にいる実習生同士で悩みを共有したり、支え合ったりできれば、精神的な支えができて辛く感じにくくなるでしょう。

5-2.実習の目的や目標を明確にする

看護実習を乗り越えるためには、実習の目的や目標を明確にすることが重要です。

辛いことばかりに注目してしまいがちですが、自分が何を学びたいのか、どんなスキルを身につけたいのかを具体的に考え、それに向かって努力することで将来を見据えて行動できます。

また、目標が明確であれば、辛いことがあっても乗り越えやすくなるでしょう。

5-3.事前学習・事前準備をきちんと行う

事前学習や事前準備をしっかり行うことも、看護実習を乗り越えるための重要なポイントです。

実習で求められる知識や技術を事前に習得しておくことで、自信を持って実習に臨むことができます。また、準備不足による不安やストレスを減らすことができ、実習中のパフォーマンス向上につながり、自信を持ちやすくなります。

5-4.モチベーションを高く保つ方法を見つける

モチベーションを高く保つことも、看護実習を乗り越えやすくなります。

たとえば、実習の進捗を記録して達成感を得るなどのように実習に直結するものであったり、好きな音楽を聴いてリラックスする、実習後に自分へのご褒美を設定するなどが挙げられます。

自分に合った方法を見つけてモチベーションを高く維持できれば、失敗したり、悩んだりすることがあっても前向きに捉えやすくなるのでおすすめです。

5-5.指導や注意を受けたときは受け入れる

実習中に指導や注意を受けた際、前向きに受け入れることも看護実習を乗り越えてるうえ大切な要素となります。

指導や注意を受けたら、ショックやストレスを感じることも少なくありません。

しかし、指導や注意は、自己成長のために欠かせないものです。指導者は悪意を持って指導や注意をしているわけではないため、改善点をしっかりと理解して次に活かすことで、スキルや知識を向上させることができるでしょう。

6.看護実習のDX化について

最後に、看護実習のDX化について見ていきましょう。

6-1.看護実習の記録はなぜデジタル化が重要?

看護学生にとって「記録を書く」ことは知識や経験、実践を振り返り、学びを習得していくために大切な工程であるといえます。

しかし、紙媒体による記録作成は、忙しい看護学生にとって負担になりがちです。また、手渡しでやり取りする必要があるため、看護学生はもちろん、教員や指導者にも負担がかります。

そこで近年では、看護実習のDX化として、看護教育の段階で電子カルテの導入が進められています。

さらに、日本の医療現場では、令和2年時点で400床以上の病院の91%が電子カルテを導入しています。

つまり、看護学生が卒業後に医療現場で着任した後、電子カルテの使用に慣れていることはスムーズに現場に慣れるうえでも重要なポイントなのです。

6-2.看護実習の記録のデジタル化が促進されない理由と将来性について

実習記録のデジタル化はさまざまなメリットがある反面、あまり導入が進んでいない現状があります。

【看護実習の記録のデジタル化が促進されない理由】

・個人情報漏えいリスク
・関係者の理解が得られない
・導入コストが高額である
・実習先の電子媒体の使用ルールがある など

このような複数の理由から、実習記録のデジタル化は促進されていません。

しかし、記録のデジタル化を取り入れることで、看護学生と指導者の負担が軽減されることは明らかです。そのため、データ保護の仕組みの導入や個人情報の取り扱いについて、導入コストの問題などを解決できれば導入が進んでいくと予想されます。

7.まとめ

今回は、看護実習の内容やスケジュール、どのようなことが辛いのかなどを解説しました。

看護実習は、看護の実践力の習得やコミュニケーション能力の育成などを目的としており、看護師として医療現場で活躍できるようになるためには必要不可欠なものです。

3年制学校、4年制大学のどちらでも、1年次から看護実習が始まるため、目標をもって有意義なものにすることが大切です。

また、どのようなことが辛いと感じやすいのか、辛いときの対処法などを知っておくと、モチベーションを維持しながら看護実習に臨みやすくなるでしょう。

ぜひ今回の記事を参考に、有意義な看護実習を実現してみてください。

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