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フライトナースになるには?必要な資格・経験から実際の仕事内容まで

フライトナース

ドクターヘリの現場で、医師と共に救命の最前線に立つフライトナース。一刻を争う救急医療の現場で、高度な医療知識と判断力を駆使しながら、重症患者の命をつなぐ救命医療のスペシャリストです。

近年、医療ドラマなどを通じて救命救急医療への注目が集まっていますが、その現場で重要な役割を担うフライトナースの実態については、まだ十分に知られていないのが現状です。患者の重症度が高く、大きなプレッシャーと向き合う必要がありますが、人の命を救うやりがいと誇りを感じられる職種として、多くの看護師が憧れを抱いています。

そこでこの記事では、フライトナースの具体的な仕事内容から、必要な資格・経験、実際の年収まで、情報をまとめて紹介していきます。救急医療の世界でキャリアアップを目指す看護師の方に向けて、フライトナースという選択肢への理解を深めていただける内容となっていますので、ぜひ最後までご一読ください。

1.フライトナースとは

救命医療の現場で活躍するフライトナースは、ドクターヘリに医師とともに搭乗し、重症患者の救命活動にあたる看護師です。

厚生労働省では、フライトナースを次のように定義しています。

フライトナースとは、病院外の救急現場へヘリコプターで出動し、緊急度が高く重症なあらゆる年代の患者とその家族を対象として看護を実践し、現場での初療や重症患者の看護を継続しつつ、救急車やヘリコプターで搬送する看護師である

引用:厚生労働省「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」

救急現場での迅速な医療介入を可能にする重要な役割を担っており、高度な専門性から、看護師のキャリアパスの中でも憧れの職種として注目されています。

2024年2月現在、日本全国でドクターヘリは57機が運用されており、1都2府36県に各1機、8県に各2機、北海道には4機が配備されています。しかし、ドクターヘリの配備数が限られているため、フライトナースとして活躍できる機会も自ずと限定的となっています。

普段、フライトナースはドクターヘリが配備されている救命救急センターに所属する救急看護師として勤務しています。そして、フライト担当の日に出動要請があった場合は現場に急行します。

フライトナースは専門看護師や認定看護師のような特別な資格制度ではありませんが、多くの病院では、選考基準としてACLS(二次救命処置)やJPTEC(外傷初期診療のプログラム)といった高度な救急対応能力や専門的知識の習得を証明する各種資格の取得に加え、実践的な看護スキルや判断力、ストレス下での冷静な対応力なども重視されます。

参考:認定NPO法人 救急ヘリ病院ネットワーク HEM-Net「ドクターヘリを知るー拠点」

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空飛ぶ医者フライトドクターとは?やりがいやなる方法、体験談を紹介

2.フライトナースの勤務体制と業務内容

フライトナースの勤務体制は、フライトを担当する日と担当しない日があらかじめ決まっています。それぞれのケースで見ていきましょう。

2.1 フライト担当日の場合

フライト担当の日に出動要請があった場合の流れは以下の通りです。

・出動の準備と待機中

フライトナースは、フライトを担当する日には専用のフライトスーツを着用し、いつでも出動できる状態で勤務を行います。出勤時には、医師やヘリスタッフとのカンファレンスをはじめ、天候状況やスケジュールのほか、ヘリ内部や医療機器、必要物品の点検も行います。

・出動時の初期対応

消防本部からの出動要請を受けると、事前に準備しておいた医療機器・医薬品を持ち、数分の間で出動します。機内では、出動要請時に得られた情報から、医師と治療方針の確認をしたり、必要な医療機器の最終チェックを行ったりします。現場には、ドクター2名とフライトナース1名、パイロット1名の計4名で向かいます。

・現場活動と初期治療

現場に到着後は、フライトドクターの治療を補助します。限られた医療器具で対応する必要があるため、この器械はこの用途にしか使えないという考えは通用せず、応用力や柔軟性が求められます。患者の容態確認と並行して、家族から情報収集や精神面のケアを行うのもフライトナースの大切な仕事です。処置後は搬送先の治療で必要な看護記録を作成します。

・搬送中の患者管理

医療機関へのヘリ搬送中も、常に患者の状態観察をしなければなりません。機内はエンジンなどの騒音が大きいため、患者の訴えを聞いたり、感じ取ったりすることが難しい場合があります。表情やちょっとした変化を見逃さないよう細心の注意を払います。容態の変化に応じて、必要な医療処置を施します。

・搬送後の対応

患者は、出動要請を受けた病院で受け入れる場合もあれば、救急車で他の病院に搬送する場合もあります。受け入れ先の医療機関で患者の引き継ぎを完了後、所属する救命救急センターで使用した医療機器のケアや補充、記録整理を行います。必要に応じて症例検討や改善点の確認を行い、次の出動に備えます。

2.2 フライト担当外の日の場合

出動要請を担当しない日のフライトナースは、所属する救命救急センターでの看護業務を行います。三次救急医療機関である救命救急センターでは、24時間体制で救急車搬送による重症患者の受け入れを行っているため、救急看護師として下記のような専門性の高い業務を担います。

  • 重症患者の看護ケア
  • 救急外来での初期対応
  • 医療機器・物品の管理と点検
  • 症例検討会への参加
  • 各種記録の作成と管理
  • スタッフ間での情報共有

こうした業務を通じて、フライトナースとして必要な救急医療の知識と技術を日々磨いていきます。

3.フライトナースの年収

フライトナースの収入は、通常の看護師と比較し高い傾向にあります。それは、フライトナースに支給される「ドクターヘリ搭乗手当」と救命救急センターで勤務する際に支給される「特殊業務手当」によるものです。

厚生労働省の「令和5年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均年収は約508万円となっていますが、フライトナースの年収は手当を含め約530万円前後となるケースが多いようです。

ドクターヘリを配備している病院の多くは大規模な救命救急センターで、基本給自体も高めの施設が多くなっており、さらに年収が上がる場合もあります。

参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」

4.フライトナースになるには?

フライトナースになるには、正看護師資格が前提となりますが、日本航空医療学会フライトナース委員会の選考基準によると下記のようになっています。

i. 看護師経験5年以上救急看護経験3年以上、または同等の能力が望ましい。リーダーシップがとれる。
ii. ACLS プロバイダーおよび JPTEC プロバイダー、もしくは同等の知識・技術を有している。
iii. 日本航空医療学会が主催するドクターヘリ講習会を受講している。

引用:厚生労働省「ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準」

これらの選考基準を満たし、ドクターヘリを所有する病院に勤務し、病院内でフライトナースに選ばれる必要があります。

4.1 必要な経験年数

フライトナースになるためには、一定の臨床経験が必要です。要件として、看護師経験が5年以上、そのうち救急看護での経験3年以上が求められる場合はあります。

現場では交通事故をはじめ、山岳地帯や工場などでの事故など様々な外傷症例に対応することが多くなっています。さらに、重篤な心疾患や脳血管障害などにも即座に対処できる能力が必要です。院内とは異なり、限られた医療資源で最適な処置を行うため、臨機応変な対応力も必須となります。

このように高いレベルの知識や技術が求められるため、長い臨床経験や救急看護の経験が必要となります。

4.2 資格について

フライトナースの選考基準を満たすための資格と取得することが望ましい資格を見ていきましょう。

基準を満たすための資格

・ACLSプロバイダー

ACLSプロバイダーは、心肺停止やその他の心血管エマージェンシーの処置を指揮・実施するための資格です。アメリカ心臓協会(AHA)の認定資格で、心停止、心拍再開直後、徐脈・頻脈、脳卒中、急性冠症候群などの認識・治療における技術向上を目的としています。

参考:日本ACLS協会「ACLSプロバイダーコース」

・JPTECプロバイダー

JPTECプロバイダーは、救命現場でのロード&ゴーが判断でき、現場における適切かつ迅速な観察、処置を実施できる能力を証明する資格です。外傷傷病者の観察・処置や医療機関の選定、安全な搬送まで、一連の流れについて幅広く学びます。

参考:JPTEC協議会「JPTEC協議会が指定する教育コース」

取得することが望ましい資格

・第三級陸上特殊無線技士

ドクターヘリで活動するには、無線通信の操作を行うための資格として第三級陸上特殊無線技士の資格が必要です。陸上の無線局の無線設備の技術的な操作を行うための国家資格で、特に陸上移動業務や携帯移動業務(蛍雪無線や消防無線など)の無線局操作に必須となります。

参考:日本無線協会「陸上無線従事者」

4.3 ドクターヘリ講習会の受講

フライトナースになるためには、日本航空医療学会が主催する「ドクターヘリ講習会」の受講が必須条件です。講習会では医師や看護師といったドクターヘリの医療チームだけでなく、救急隊員や操縦士、整備士、運用管理者など多職種が参加し、通常の救急医療とは異なる特殊な知識と技術を体系的に学ぶと共に、実技訓練も行われます。

参考:日本航空医療学会「ドクターヘリ講習会」

4.4 ドクターヘリを所有する病院に勤務する

フライトナースとして活動するには、ドクターヘリ基地病院での勤務が必要です。下記の通り、全国のドクターヘリ基地病院は46都道府県にあり、計56機が配備されています(令和4年4月18日現在)。

【ドクターヘリ基地病院一覧(令和4年4月18日現在)】
ドクターヘリの導入状況
厚生労働省の資料を参考に弊社にて編集加工をしております

北海道:旭川赤十字病院、市立函館病院、市立釧路総合病院、手稲渓仁会病院
青森県:青森県立中央病院、八戸市立市民病院
岩手県:岩手医科大学附属病院
宮城県:国立病院機構仙台医療センター・東北大学病院
秋田県:秋田赤十字病院
山形県:山形県立中央病院
福島県:福島県立医科大学附属病院
茨城県:国立病院機構水戸医療センター・水戸済生会総合病院
栃木県:獨協医科大学病院
群馬県:前橋赤十字病院
埼玉県:埼玉医科大学総合医療センター
千葉県:国保直営総合病院君津中央病院、日本医科大学千葉北総病院
東京都:杏林大学医学部附属病院
神奈川県:東海大学医学部付属病院
新潟県:長岡赤十字病院、新潟大学医歯学総合病院
富山県:富山県立中央病院
石川県:石川県立中央病院
福井県:福井県立病院
山梨県:山梨県立中央病院
長野県:佐久総合病院佐久医療センター、信州大学医学部附属病院
岐阜県:岐阜大学医学部附属病院
静岡県:順天堂大学医学部附属静岡病院、聖隷三方原病院
愛知県:愛知医科大学病院
三重県:伊勢赤十字病院・三重大学医学部附属病院
滋賀県:済生会滋賀県病院
大阪府:大阪大学医学部附属病院
兵庫県:公立豊岡病院、兵庫県立加古川医療センター・製鉄記念広畑病院
奈良県:奈良県立医科大学附属病院
和歌山県:和歌山県立医科大学附属病院
鳥取県:鳥取大学医学部附属病院
島根県:島根県立中央病院
岡山県:川崎医科大学附属病院
広島県:広島大学病院
山口県:山口大学医学部附属病院
徳島県:徳島県立中央病院
愛媛県:愛媛県立中央病院
高知県:高知県・高知市病院企業団立高知医療センター
香川県:香川県立中央病院・香川大学医学部附属病院
福岡県:久留米大学病院
佐賀県:佐賀県医療センター好生館、佐賀大学医学部附属病院
長崎県:国立病院機構長崎医療センター
熊本県:熊本赤十字病院
大分県:大分大学医学部附属病院
宮崎県:宮﨑大学医学部附属病院
鹿児島県:鹿児島市立病院、県立大島病院
沖縄県:浦添総合病院

参照:厚生労働省「搬送手段の多様化について(ドクターヘリ・ドクターカー)」

ただし、フライトナースの採用条件については、勤務先の医療機関によっても条件が異なります。同等の能力があると認められる場合は、柔軟に対応されることもありますので、事前に確認してください。

5.フライトナースについてよくある質問(Q&A)

ここでは、フライトナースについてよくある質問を5つまとめて紹介します。

Q1. フライトナースに求められる専門知識や看護技術とは?

フライトナースには、救急看護の高度な専門知識と技術が求められます。フライトナースを目指す場合、救急部門だけでなく、集中治療室や手術室など急性期医療に関わる様々な部署での経験を積み、幅広い知識と技術を習得することが重要です。

特に必要とされる専門的スキルとして、ACLS(二次救命処置)、JPTEC(病院前救護にかかわる人々が習得すべき知識と体得すべき技能が盛り込まれた活動指針)があります。

JPTECについては、一般の看護師が自主的に受講できるものではなく、病院が指定した場合に必要となるものです。JPTEC協議会が指定する教育コースなどで学ぶことになります。

Q2. フライトナースの業務は大変そうな印象がありますが、激務なのでしょうか?

確かに身体的・精神的負担は大きい仕事といえます。

重症患者への対応は緊張感が高い上、災害や事故現場では病院と大きく異なる環境なため体力面や精神面で大きな負荷がかかります。また、不規則な勤務シフトの中でも、スキルアップのため継続的な学習と訓練が必要です。

そこで、多くの施設では働き方改革で、計画的な勤務シフトや定期的な健康管理など、働きやすい環境づくりに努めています。

Q3. フライトナースの求人状況は?

フライトナースの求人は、主にドクターヘリ基地病院から出ます。現在、全国各地にドクターヘリ基地病院が設置されていますが、各病院で必要とされるフライトナースの人数は限られているため、求人数自体は多くありません。

そのため、ドクターヘリを所有する医療機関で一般の看護師として臨床経験を積みながら、フライトナースを目指す道もおすすめです。

ドクターヘリを所有する病院一覧はこちら▼
厚生労働省「搬送手段の多様化について(ドクターヘリ・ドクターカー)」
※ドクターヘリ基地病院一覧(スライド6)

Q4. フライトナースのキャリアアップ例は?

フライトナースのキャリアアップのイメージには、専門性の向上、人材育成、管理職といった方向性があります。

・専門性を向上させる
フライトナースとしての経験を活かし、救急看護やクリティカルケア分野の認定看護師資格を取得するなど、より専門性の高い知識と技術を身につけることができます。専門的スキルの向上により、質の高い看護実践につながるとともに、資格手当や昇給も見込めます。

・人材育成に携わる
豊富な経験とスキルを持つフライトナースが、新たなフライトナース育成の教育者として活躍することができます。講習会での指導や現場でのトレーニング指導など、自身の経験を活かして救急医療に貢献できる役割を果たせます。

・管理職を目指す
フライトナースとしての経験をもとに、救命救急センターやICUなどの看護主任や看護師長といった管理職を目指せます。資格取得や一定の経験年数など勤務先の定める条件を満たす必要がありますが、急性期医療の現場でリーダーシップを発揮できるためやりがいがあります。

6.まとめ

フライトナースは、救命医療の最前線で活躍する、やりがいのある専門性の高い職種です。目指したい方は、まず救急看護の経験を積むことから始めましょう。現在、全国46都道府県にドクターヘリ基地病院があり、求人数は限られるもののチャンスは広がっています。

具体的には、救命救急センターや急性期病棟での看護経験を積みながら、フライトナースに必要な資格を計画的に取得する、救急看護認定看護師の資格取得を目指す、といった方向性により、着実に専門性の高いキャリアを築くことができます。

フライトナースに求められる高度な医療知識と技術を習得し、救命現場で活躍したい方は、ぜひチャレンジしてみてください。

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