看護師の夜勤の現状と働き方・キャリアパスへの影響
看護師の夜勤は、患者の命を24時間体制で守るために欠かせない重要な業務です。一方で、不規則な生活リズムや長時間勤務など、看護師の心身に大きな負担をかけているのも事実と言えます。
特に近年は、2交代制の増加に伴う長時間夜勤の常態化が問題視され、看護師の働き方を見直すことが急務となっています。
そこでこの記事では、看護師の夜勤の現状と課題について、データを活用し分かりやすくまとめました。看護師のよりよい働き方やおすすめのキャリアパスのポイントについても紹介していますので、最後までご一読ください。
1.看護師の勤務形態について
看護師は、患者に対し24時間365日の断続的なケアを提供する必要があり、病棟勤務では交替のシフト制で働くケースが一般的です。
主な勤務形態の中に2交代制と3交代制があり、病院の規模や方針、患者のニーズによって選ばれています。
1-1.看護師の勤務形態の種類
2交代制と3交代制の特徴を見ていきましょう。
2交代制
2交代制は、24時間を日勤と夜勤の2つのシフトに分ける勤務形態です。
一般的な勤務時間は下記の通りです。
・日勤:8:00~17:00(8時間勤務、休憩1時間)
・夜勤:16:30~9:00(16時間勤務、休憩2時間程度)
2交代制のメリットは、3交代制と比べて夜勤の回数が少なく、月に4~6回ほどになります。また、夜勤明けからお休みに入ることができるため、次の勤務まで休息時間を長くとることができます。勤務時間のパターンは2通りとなり、生活リズムが比較的安定しやすいという利点があります。
一方で、1回の夜勤が16時間と長時間になるため、身体的な負担が大きくなります。特に、夜勤中の集中力の低下や疲労の蓄積には注意が必要です。
3交代制
3交代制は、24時間を日勤、準夜勤、深夜勤の3つのシフトに分ける勤務形態です。
一般的な勤務時間は次の通りです。
・日勤:8:00~16:30(8時間勤務、休憩1時間)
・準夜勤:16:00~24:30(8時間勤務、休憩1時間)
・深夜勤:24:00~8:30(8時間勤務、休憩1時間)
3交代制のメリットは、夜勤1回の時間が2交代制より短いため、身体的な負担が比較的少ないことです。また、夜勤の勤務時間が短いので、より細やかな患者ケアや気遣いを継続することができるでしょう。
しかし、3交代制は、準夜勤と深夜勤はそれぞれ4~5回担当する場合が多く、合わせて月9回前後になります。2交代制と比べて夜勤の回数は多くなるので、生活リズムが乱れたり、引き継ぎの回数が増え業務の連続性が損なわれやすかったりというデメリットを持っています。
勤務形態は、病院の運営方針によって選択されます。長時間の交替勤務は看護師個人の生活スタイルや体力への影響が大きいため、適切な休息と健康管理が重要です。2交代制、3交代制によってワークライフバランスが大きく変化するので、自分に合った働き方を見つけるとよいでしょう。
1-2.2交代制の増加とその背景
従来、病院の勤務形態は3交代制が主流でしたが、2006年頃から2交代制の病棟が増加しています。
日本医療労働組合連合会(医労連)の調査によると、2交代制を採用する病棟の割合は年々上昇し、2023年度の調査では48.4%と過去最多を記録しました。
医療現場で2交代制が進む背景として、準夜勤の次が日勤になる場合があるため体力的につらいこと、生活リズムが崩れてしまうこと、また看護師の人手不足が進んでいるなどの事情があります。
一方で、16時間以上に及ぶ長時間夜勤の常態化によって、看護師の心身の健康や患者安全に影響を与える恐れが高くなるという課題も浮上しています。
参照:「2023年度夜勤実態調査」|日本医療労働組合連合会(医労連)
2.看護師の夜勤実態
看護師の夜勤は、24時間体制の医療を支える重要な業務です。しかし、実態として過酷な労働環境が続いており、看護師の健康や医療の質に深刻な影響を及ぼす可能性があります。
下記で、日本医療労働組合連合会(医労連)「2023年度夜勤実態調査」から、看護師の夜勤の現状と課題を見ていきましょう。
実態①1か月あたりの平均夜勤日数
看護人材確保法の基本指針では、3交代制の場合、月8回以内の夜勤体制の構築を推奨していますが、3交代制では約3割の27.5%看護師が基準を超える「月9日以上」の夜勤を行っており、実態は厳しい状況にあります。特に2交代制職場の平均夜勤回数は4.28回と過去最高を記録し、看護師の負担が増加傾向にあることがわかります。
さらに、ICU(集中治療室)やCCU(冠疾患集中治療室)などの重症患者を扱う部門では、基準を超える夜勤回数がより顕著で、3交代制で44.2%、2交代制で56.2%もの看護師が水準を上回る夜勤が行われているようです。
実態②長時間夜勤の現状
8時間以上の勤務を行う2交代制ですが、2交代制を導入している病棟の約半数で、16時間を超える夜勤を行っているとの調査結果がでました。また、この数値は昨年度よりも増加しています。長時間夜勤は、海外の研究結果より看護師の心身に負担をかけるだけでなく、医療提供の安全面に対してのリスクを高める可能性が示唆されています。医労連でもこの問題に対し、長時間夜勤に対し、労働時間の規制を行ったり、夜勤の日数を制限するなどの対策を検討する必要があるとしています。
参照:『時間外労働と長時間勤務シフト(アメリカ国立労働安全衛生研究所 )』|過重労働対策ナビ
実態③夜勤ガイドラインの順守状況
夜勤のルール作りに関しても、多くの課題があります。調査によると、夜勤協定を結んでいる施設は約7割の66.6%にとどまり、33.4%の施設で夜勤に関する明確なルールが設けられていない状態です。また、労働者の健康維持に重要な勤務間インターバル制度の導入施設も全体の16.6%と低調で、多くの看護師が十分な休息時間を確保できていない可能性があります。
現状の改善のため、医療機関全体の夜勤協定締結を進める必要があります。夜勤のルールを設けることで、安全面や健康面に配慮した夜勤回数や時間などしっかりと規制することが重要です。
参照:「2023年度夜勤実態調査」|日本医療労働組合連合会(医労連)
参照:看護職員確保対策 |厚生労働省
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3.【職場・施設別】勤務形態の特徴
看護師の勤務形態は、働く場所によって大きく異なります。ここでは、主な職場・施設別の勤務形態の特徴を一つずつ見ていきましょう。
総合病院
総合病院では、配属先によって勤務形態が異なります。病棟では2交代制または3交代制が主流で、同じ病院内でも病棟ごとに異なる場合があります。
外来は主に平日の日勤ですが、施設によって土曜診療や救急外来での夜勤・宿直がある場合もあります。オペ室は平日の日勤が基本ですが、緊急手術に備えてオンコール当番制を採用しているところが多いです。
クリニック
クリニックは基本的に診療時間に合わせた日勤のみの勤務形態が多く、夜勤はありません。ただし、透析クリニックなどは仕事の前や終わったあとに受診される方も多く、患者の生活スタイルに合わせた受診時間を設定している場合が多いです。そのため、早朝や夜間などが勤務時間に含まれていることがあります。
その他にもクリニックの診療体制などによって土曜勤務があったり、曜日固定制だったりと様々です。また、クリニック(診療所)であっても19床以下の入院施設を併設している場合は、夜勤が必要になる場合もあります。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションでは、平日の日勤のみの勤務形態が一般的です。ただし、24時間対応の事業所では夜間や休日のオンコール当番制を採用しています。患者の状態に応じて、時間外の緊急訪問にも対応する必要があります。
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企業
企業で働く看護師の多くは、一般的なオフィスワーカーと同様の勤務形態です。通常、平日の朝9時や10時頃から夕方18時・19時頃までの勤務で、完全週休2日制を採用しているところが多いです。会社内の保健室で産業看護師として勤務したり、健康・医療関係の一般企業などで活躍できます。
施設や職場によって異なる特徴を理解することで、自分のライフスタイルやキャリア目標に合った職場を選びやすくなるでしょ
4.夜勤「なし」で働ける職場
看護師のキャリアは夜勤を伴う病棟勤務だけではありません。自分が目指す働き方に合わせて、夜勤のない職場を選ぶこともできます。
下記で、夜勤なしで働ける主な職場11選を紹介します。
1. 病院の外来
外来では主に日中の診療時間内で勤務するため、夜勤はありません。患者との関わりは短時間ですが、多様な症例に触れることができます。
2. 病棟の日勤勤務
病院の中でも日勤のみの勤務形態を採用している部門もあります。例えば、夜間対応を必要としない手術室や透析室、放射線科、心臓カテーテル検査室などです。ただし、夜勤手当がないため一般的な病棟看護師に比べて給与面をどう考えるかが必要です。
3. クリニック
診療所やクリニックは、一部有床クリニックはありますが、基本的に夜勤はありません。多くに場合が日勤で時間も決まっており、身体への負担も少なくなっています。地域医療を通じて、患者と密接にコミュニケーションを図りながらケアする場面が多く見られます。
4. 訪問看護ステーション
在宅患者の自宅を定期的に訪問して看護を行う仕事です。基本的に日中の訪問が主となりますが、事業所の看護体制によっては緊急時のオンコール対応が求められる場合もあります。
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5. 健診センター
健康診断や人間ドックを行う施設で、通常は日中のみの勤務です。問診や身体測定、各種検査の補助など、予防医学の観点から健康管理に携わることができます。施設内で業務を行うほか、巡回検診を行っている施設では検診車で遠方まで出かけることもあります。
6. 老人ホーム・介護施設
老人ホームは基本的に24時間体制での運営ですが、高齢者施設によっては日勤のみの勤務形態で人材を採用しているところも多くあります。看護師として看護と介護の両面からサポートし、長期的な視点で高齢の利用者のケアに携わることができます。
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7. 保育園
園内保健室などで、園児の健康管理や応急処置を担当します。子ども達を預かる時間帯での業務になるため夜勤は発生しません。子どもとの関わりが好きな看護師に向いています。
8. 美容看護師
美容外科や美容皮膚科といった美容クリニックで働く看護師です。病院と異なり、開院時間が10:00~12:00と遅いため、退勤時間も19:00以降となる場合が多いですが、夜勤は発生しません。問診や検査・治療の補助、医師のサポートなどを通じ、医療と美容の両面から患者をサポートします。
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9. 治験コーディネーター(CRC)
新薬の臨床試験に関わる仕事です。医療の最先端に触れる機会が得られます。CRCには夜勤がなく、製薬会社や関連施設への訪問などもあるため、直行直帰をしたり、業務内容によっては在宅勤務をしたりなど柔軟な働き方はできます。土日祝も基本休みのため、仕事と私生活のバランスを保つことができます。
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10. 産業看護師
企業の健康管理室などで従業員の健康管理をするため、勤務時間も9:00~18:00などのような日勤となります。予防医学の観点から働く人々の健康をサポートします。
11. 企業勤務の仕事(企業看護師)
一般企業で看護師としての知識を活かして働く職種です。具体的には、医療機器メーカーの営業職や製薬会社の医薬情報担当者(MR)、医療系コールセンターのオペレーターなど、多岐にわたります。
企業看護師は、看護師としての経験や知識を活かしつつ、ビジネススキルを身につけることができます。こちらも企業の勤務時間に準ずるため、平日の9:00~18:00なそのような時間帯で勤務する場合が多く、夜勤はありません。
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5.夜勤「あり」で働くメリット
看護師の夜勤は確かに身体的・精神的な負担が大きいですが、一方で夜勤ならではのメリットもたくさんあります。実際に、夜勤専従看護師や応援ナースとして、あえて夜勤「あり」を選択する看護師も増えてきています。
夜勤のメリットとしては、次のような点が挙げられます。
1. 高収入
夜勤手当により、日勤のみの勤務と比べて月収で3〜5万円程度のアップが見込めます。一般的に夜勤手当は1回あたり1万円前後ですが、中には1万円台後半以上の職場もあり、高収入を目指す看護師にとっては大変魅力的です。
2. スキルアップの機会
夜間は少人数での対応が求められるため、幅広い業務を臨機応変にこなす必要があります。そのため、日勤よりも速いペースでスキルアップができる可能性があります。
3. 人間関係のストレス軽減
夜勤時は医師や看護師をはじめ他のスタッフの数が少なく、人間関係のトラブルに巻き込まれにくい環境です。業務に集中しやすく、職場の人間関係に関して精神的なストレスが少なくなる職場も少なくありません。
4. 日中の時間の有効活用
交代制や夜勤専従の場合、日中の時間を自由に使えます。家事や育児、趣味や自己啓発など、自分のライフスタイルに合わせた時間の使い方ができます。
5. まとまった休みをとりやすい
夜勤明けの翌日は休日を取りやすく、連休を作りやすいというメリットもあります。
交代制による夜勤に悩む看護師の中には、夜勤専従や夜勤パートの活用、夜勤のない職場への転職など、自分に合った多様な働き方を目指すケースも増えています。ただし、重要なのは、自分自身の体調や生活リズム、キャリアプランをしっかりと見極め、それに合った働き方を選択する視点です。
6.まとめ
本記事では、看護師の夜勤の現状と課題、そして様々な勤務形態について詳しく見てきました。2交代制の増加や長時間夜勤の常態化など、看護師を取り巻く労働環境にはまだまだ数々の課題が残されています。しかし同時に、夜勤なしの職場や夜勤専従など、多様な働き方の選択肢も広がっており、自身の目指す看護師キャリアをベースに柔軟に職場や働き方を変えやすくなっているのも確かです。
自身のキャリアプランに活かすためには、これから自己分析や情報収集、スキルアップを通じて、実際に自分が働いてみたい職場や施設を探してみましょう。キャリアパスの見直しの中で、きっとより充実した看護師人生に繋がるきっかけとなるはずです。
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