看護師が復職するためのハードルは?不安に対する対処法や復職しやすい職場環境を解説
少子高齢化の進行により、看護師の需要は今後より高まると予測されています。しかし、一方で看護師の人員充足については不足の傾向が続いているのが現状です。
そこで、その現状をカバーするために復職をサポートする体制の整備が進められており、ブランクのある看護師も復職しやすい環境が段々と整ってきてきました。
しかし実際のところ、看護師の仕事から離れている方の中には、自身のブランクに対する様々な不安があり、復職に踏み切れずに躊躇している方が多くいらっしゃいます。
そこで今回は、ブランクのある看護師がスムーズに復職成功をするための情報や方法について解説します。
1.看護師が復職の際に不安に感じやすいこと
看護師が復職を考える際、不安に感じることは、家庭との両立や体力的な不安以外にも、専門職ゆえのスキル的なことなど、多岐に渡ります。
本章では、看護師が特に不安に感じやすい点について解説します。
1₋1.現役時代からスキルが低下していないか
現役から離れた時間が長ければ長いほど、自身のスキルの低下に不安を抱きやすくなります。
病棟やクリニックなどどこの現場であっても、注射や点滴、採血などの手技が必須な場合が多いです。
そのため、ブランクがあると上手く血管を探すことができないなど、スムーズに対応できるかなど不安が大きくなる傾向にあり、復職を躊躇してしまう看護師もいます。
1₋2.最新の医療レベルや制度について行けるか
医療現場では新しい治療法や最新機器が導入され、技術革新が進んでいます。近年、医療の現場では、AIの技術を用いたり、オンライン診療が開始されていたりなど、新しい技術が導入され始めています。また、働き方改革なども行われ、タスクシフトシェアなど看護師に求められるものも増え始めました。
現場を離れて時間が経つと、これらの情報を入手しにくくなるため、復職後に最新の医療レベルについて行けるか不安を持っている方も多く見受けられます。
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1₋3.体力的な不安
体力面も、復職を考える際に大きな不安となります。立ち仕事なだけでなく、復職する職場によっては夜勤も含めた不規則な勤務となることが予測され、体力的に仕事をやっていけるか不安になる方もいます。また、おむつ交換や排泄の援助、入浴介助はかなりの体力を要します。入浴介助は病院によって、介護士のみで行う所もありますので、看護師が行っているのか確認してみるのもよいでしょう。
特に、現役を離れていた時間が長い場合、より体力に自信がないと感じて復職をためらう方もいるでしょう。
1-4.職場に馴染めるか
職場に馴染めるかどうかも、復職に対する不安の一つです。現役時代に比べ、スキルや体力が落ちているという不安を抱えながら新しい人間関係に入り、関係を構築していくのはとても大変なことです。
職員同士の関係だけでなく、患者やその家族との関係の中で信頼関係を築いていく作業は、思っている以上に大きな負担だと感じる方もいるでしょう。
1-5.復職に対する職場の理解があるか
復職に関して、職場の理解があるかどうかにも不安に感じる方もいます。採用担当者や上司になる方は復職の経緯を知っているため、ブランクや育児介護などのある看護師の事情を理解しています。
しかし、他の職員にその詳細が共有されていないことも想定されます。そのため、手技や勤務に関しての質問や援助をスムーズに受けられるのか、ブランクや介護、育児に対して職場の理解があり、家庭との両立は可能なのかなどの点かを意識し、復職をためらう方もいます。
1-6.仕事と家庭の両立ができるか
復職することで、仕事と家庭の両立ができるかどうか不安に思う方もいます。
特に、育児や介護の必要度合いや、家族の協力や理解があるかどうかによっても両立のしやすさは大きく変わり、夜勤やフルタイムでの勤務が難しい場合もあります。
このような悩みから復職に迷う方もいるでしょう。
2.潜在看護師の復職率は高いの?
看護師や准看護師の資格を持っているものの、看護分野で就業していない潜在看護師は厚生労働省の調査によると平成24年(2012年)時点で約71万人です。
そのうち、看護分野で再就業したのは約14万人でした。
また、退職経験がある看護職員の退職理由を見てみると、最も多いのが「妊娠・出産のため」となっており、その他判明している理由としては「結婚のため」「他施設への興味」と続いており、主にライフステージの変化が理由となっていることが読み取れます。
これは、看護師として働いている方の多くが女性のため、ライフステージ変化による影響を受けやすいと考えられるでしょう。
3.復職のために不安を軽減する方法
看護師が、復職を考えた際に不安を軽減するために自身で行えることもあります。本章では、復職のためにできる具体的な対策を解説します。
3₋1.最新の医療知識について勉強する
医療知識は、診療科を問わず日々進歩しています。最新の医学知識やニュースについては、臨床現場でなくてもインターネットや書籍、SNSなどの動画からでも学ぶことは可能です。また、看護情報サイトなどに登録し、定期配信されるメルマガなどでも最新の情報を得ることができます。
可能な限り最新の医療に関する情報を集め、自主的に勉強しておけば復職を考えた時に安心して現場に戻ることができるでしょう。
3⁻2.復職支援制度を利用して相談する
各都道府県には、1992年に制定された「看護師等の人材確保の促進に関する法律」に基づいて「ナースセンター」が設置されています。
ナースセンターでは、都道府県によって一部サービス内容が異なりますが主に次の事業を行っています。
・再就職に関する相談と無料職業紹介
再就職を考えている看護師は、ブランク期間や家庭事情、希望条件が人によって異なります。ナースセンターでは、それぞれの事情や希望に合わせた再就職先を常勤だけでなく、パートタイマーなどその後のキャリアも見据えた求人の紹介をしてくれます。
・再就職支援研修
最新の医療機器を使った技術講習や看護研修など、ブランクがあってもその間の知識を補える各種研修を行い、安心して臨床現場へ戻れるように支援しています。
・交流会(交流カフェ)
復職を希望している看護師だけでなく、定年退職した方など様々な看護職の方々と交流できる場を設けています。復職に関する話が聞けるだけでなく、育児や家庭に関するちょっとしたお悩みを話すことも可能です。
参照:公益社団法人 日本看護協会「ナースセンターとは」
参照:厚生労働省 看護師のキャリアと働き方「ブランクを経て働く」
3₋3.看護師の転職支援会社に登録してみる
看護師や医療職の求人を専門に取り扱う転職支援会社や派遣会社に登録してみるのもおすすめです。ブランクがある方をはじめ、様々な希望条件やキャリアプランを踏まえて最適な求人を紹介してくれます。
また、転職支援会社や派遣会社の福利厚生の一環として、託児所の紹介やキャリア相談、各種研修を受けられる場合もあり、検討してみてはいかがでしょうか。
3⁻4.転職・復職経験者に話を聞いてみる
もし、周囲に転職や復職経験者がいれば話を聞いてみると、アドバイスがもらえる可能性があります。
あなたと同じように、不安な気持ちを乗り越えて復職した話を聞くことで「不安なのは自分だけではない」という安心感を得ることもできます。
3-5.家族と復職後の働き方についてよく相談する
家族と復職後の働き方について相談することも大切です。
勤務形態や勤務時間によっては、家庭生活にも大きな影響が出ます。育児中の方は特に、子どもや配偶者の理解がなければ復職後働き続けることは難しくなることが予想されます。
しっかり話し合い、復職後の生活で起こりえる様々なパターンのシミュレーションをしておくことが大切です。
4.ブランクがあっても復職しやすい環境は?
本章では、ブランクがある看護師にとって復職しやすい環境について紹介します。
4₋1.ブランクあり歓迎の求人
病院や診療所(クリニック)などによっては、ブランクのある看護師を歓迎している求人もあります。求人によっては、今までの雇い入れの実績を掲載していたり、先輩スタッフによるOJTや研修などの環境が整っていたりとフォロー体制がしっかりした所が多いようです。
4₋2.日勤のみの求人
夜勤や休日の勤務がない、平日日勤のみの求人も多く募集されています。
夜勤がない分、生活リズムが一定に保てるため家庭との両立がしやすく、育児や介護がある方も復職先として選択しやすいでしょう。また、夜勤がないため、体力的な負担も少なくなります。
4₋3.パートタイマーなど短時間勤務ができる求人
パートタイマーなど短時間で勤務曜日が相談できる求人もあります。
体力的に不安がある場合も、まずは短時間勤務からスタートし、徐々に日勤や夜勤がある求人へ切り替えていくことで、スムーズに復職してステップアップしていくことができるでしょう。
4₋4.クリニック(診療所)
クリニックや診療所の求人もおすすめです。
病院と比べて勤務時間が短く、重篤な患者を診ることが少ないため、スキルに不安がある場合も徐々に慣れていくことができます。勤務時間帯も、子どもが学校に行っている間だけなど、相談することができる求人もあるので探してみるといいでしょう。
4-5.託児所完備の求人
病院によっては、託児所完備の求人もあります。
病児保育をしているところや小児科が併設しているところもあり、保育所に預け始めたばかりの時期に多い発熱などの体調不良にもある程度対応してくれます。
勤務している医療従事者の子どもを優先して受け入れているため、保活などで苦労しなくていい点も利点として挙げられるでしょう。
4-6.介護施設や企業・学校の看護室など
病院やクリニックではなく、介護施設や企業・学校の看護室などでの求人もあります。
勤務時間が平日昼間中心となり、家庭との両立や体力的な負担も軽減される傾向があり、おすすめです。
5.復職にあたって注意すること
復職をするにあたり、注意しておきたいことについて紹介します。
5₋1.いきなりフルタイムを目指さない
復職は、いきなりフルタイム勤務を目指すことが必ずしも最善とは限りません。
現場から離れていた期間や、家庭の事情、体力などは人によって違います。まずは現場に復職して慣れることから始めたり、家庭の状況に合わせた働き方からスタートしたり、自分や家族にとってベストな働き方をすることが大切です。
状況の変化にあわせて、働き方を徐々に変えていくことは可能なため、焦らずゆっくりと対応していきましょう。
5₋2.家族や職場の理解が得られるよう対話を重ねる
家族や職場の理解を得られるよう、自分の思いや状況をこまめに報告、相談していくことが求められます。
いくら家族や職場が復職に対して理解を示していても、実際に働いていく中で感じる不安や変化、手ごたえは、やってみなければ分かりません。
家族や職場と定期的にコミュニケーションを取り、状況を丁寧に伝えてお互いに良い環境となるようにしていくことが、復職して長く働き続けるコツです。
6.ブランクを経て復職した看護師の声
実際にブランクを経て復職した看護師のリアルな声を厚生労働省 看護師のキャリアと働き方「ブランクを経て働く人のエピソード」の実例をもとに紹介します。
実例1.子どもが学校に行っている間だけ週に2日のパート勤務
復職にあたり、家庭を大切にしたいため、子どもが学校に行っている間だけ働きたいという希望を持っていました。また、配偶者の転勤が多いこともあり、フルタイムでの勤務は諦めていたところ「看護師で離職した方の届出制度が始まった」というポスターを見つけたそうです。
気軽に相談してみようと思いナースセンターで相談した結果、まずはフルタイムでの勤務ではなく、子どもが学校に行っている時間帯で近くの小児科クリニックで週2日のパート勤務の仕事を紹介いただいたとのことです。
ナースセンターは全都道府県にあるため、今後も配偶者の転勤で他地域に行った時にも利用したいと考えているそうです。
実例2.平日日勤のみで復職、将来はフルタイムを目指す
以前は病棟で働いていましたが、配偶者の海外赴任で離職し、子育てなどで約10年のブランクがありました。もう一度看護師として働きたいと思ったものの、最新の技術や知識についていく自信がなく躊躇していたところ、ナースセンターが開催する復職支援の交流会の案内を郵便局で見かけ、気軽な気持ちで参加しました。
相談員に不安な気持ちを打ち明けたところ、復職支援研修への参加を提案いただいたとのことです。
実際に復職支援研修に参加した結果、働くイメージを持つことができ、まずは平日日勤の勤務からスタートすることができたようです。
将来的に、子どもがもう少し大きくなって育児が一段落したら病棟勤務も検討中とのお話でした。
実例3.病棟勤務から訪問看護師へ
以前は都会の病院で病棟勤務をしていましたが、いつか地方の病院で働いてみたいと思っていました。
離島医療に興味を持った際、ナースセンターの存在を知って登録したのがきっかけで、相談員の方は、離島にある病院で社宅など生活基盤も整った求人を紹介してくれたそうです。
今は、病棟勤務の傍ら離島への訪問医療にも同行しており、充実した毎日を過ごしているとのことでした。
実例4.病児保育を併設している病院で日勤として復職
地域の基幹病院の循環器内科で、8年病棟勤務をしていました。
通勤時間の問題もあり、結婚を機に退職し、その後出産した時には既に離職から4年が経っていました。地域の保育園は空きがなく、保活も厳しかったためいったんは働くことをあきらめていたそうです。
その後、看護師専門の派遣会社に登録し、平日日勤のみで働きたいこと、子どもが病弱であったため病児保育の受け入れが可能な託児所併設の病院で働きたいことを伝えたそうです。少し難しい条件ではありましたが、地域基幹病院で小児科併設の病院を2つ紹介していただけたそうです。
職員の子どもについては優先的に受け入れてもらえると聞き、結果的に保活が不要になったこと、安心して子供を預けて働ける環境に感謝しています。育児が一段落した今、同じ病院で正職員として働いており、夜勤も含む病棟勤務を行いながら充実した毎日を過ごしているとのことでした。
参照:厚生労働省 看護師のキャリアと働き方「ブランクを経て働く人のエピソード」
7.まとめ
以上、看護師が復職する場合の不安の対処法や、復職しやすい環境などを解説しました。
長い人生の中で、仕事から離れたり、復職したり、柔軟に変化し続けることは充実したライフプランを形成する上でも大切なことです。ぜひ、前向きにキャリアを考えてみてください。
この記事が、復職に対する参考になれば幸いです。
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