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潜在看護師とは?復職するための準備やおすすめの働き方・職場を解説

潜在看護師

潜在看護師は、看護師免許を所有している65歳以下の人の中でも、現在は看護師として働いていない人のことです。2023年時点で医療機関の約7割が看護職の人手不足を実感していますが、潜在看護師が復職することで状況が改善する可能性があります。しかし、潜在看護師の数は減少しておらず、復職がスムーズに進んでいないのが現状です。

そこで本記事では、潜在看護師の現状や復職しない理由、スムーズに復職するための準備やおすすめの働き方・職場などについて詳しく解説します。

1.潜在看護師とは

潜在看護師とは、現在は看護師として働いていないが看護師免許を持つ65歳以下の人のことです。看護師免許取得後に看護師として臨床経験を積んだことがあるか、働いていない期間はどれくらいかなどの条件はありません。

平成30年(2018年)時点における、看護職員(看護師と准看護師)の潜在数は、男性が97,602人(潜在率約45%)、女性が696,282人(潜在率約32%)で、合計793,885人(潜在率約33%)でした。

男女合計で約3割もの人が資格を持ちながらも看護師として勤務していないのが現状です。潜在看護師が多い原因については、次章「2.看護師が離職する理由」で説明していきます。

※潜在率は、看護職および准看護師の資格を有する人の数を潜在数で割って算出

出典:厚生労働科学研究成果データベース「厚生労働科学研究費補助金(地域医療基盤開発推進研究事業) 「新たな看護職員の働き方等に対応した看護職員需給推計への影響要因と エビデンスの検証についての研究」 分 担 研 究 報 告 書(令和2年度)

2.看護師が離職する理由

2023年度の調査によると、看護師が離職する理由は下記のとおりです。

最も多い離職理由は「結婚・出産等(約24%)」です。勤務先によっては勤務形態が不規則なために、家庭と仕事の両立が難しいと感じる方が多いと考えられます。次に多い離職理由は「業務が負担(約22%)」です。看護師は人の命を預かるお仕事として身体的・精神的に負担が大きく、疲労やストレスが蓄積されやすいため、自分には合わないと感じる方もいます。

3番目に多いのが「人間関係(約20%)」に関連する離職です。医療現場はチームワークが不可欠であり、同僚や上司との良好な関係が求められます。職場内の人間関係がうまくいかない場合、ストレスや働きづらさを感じて離職を決意する人もいるでしょう。

【看護師の主な退職理由】

全体
n=64,628
20代
n=7,288
30代
n=14,355
40代
n=18,246
50代
n=15,265
第1位結婚(11.6%)結婚(13.1%)結婚(15.7%)子育て(16.1%)親族の健康・介護(12.7%)
第2位子育て(10.5%)転居(12.7%妊娠・出産(15.2%)結婚(13.0%)自分の健康
(主に身体的理由)
(10.4%)
第3位転居(9.1%)看護職の他の職場への興味
(11.5%)
子育て(14.5%)妊娠・出産(11.9%)結婚(10.4%)
第4位妊娠・出産(8.8%)自分の健康
(主に精神的理由)
(8.9%)
転居(13.1%)転居(8.5%)子育て(9.0%)
第5位自分の健康
(主に身体的理由)
(7.4%)
夜勤の負担が大きい
(7.8%)
配偶者の転勤(9.9%)看護職の他の職場への興味
(7.5%)
転居(7.6%)
「2021(令和3)年度ナースセンター登録データに基づく看護職の求人・求職・就職に関する分析報告書」(日本看護協会中央ナースセンター)を参考に弊社で加工いたしました。

また、看護職員の主な離職理由は、どの年代でも「結婚」や「妊娠・出産」、「子育て」、「親族の健康・介護」などのライフステージの変化に伴うものが上位を占めています。

そんな中、20代の看護職員の退職理由の上位に「自分の健康(主に精神的理由)」が入っています。数値も他の年代と比較し高く、経験不足からくる不安や職場でのストレスに対する耐性が低く、精神面にも悪影響を及ぼし、離職につながると考えられます。

30代・40代は、ライフステージの変化や大きなイベントが集中する時期です。特に子育て中は、シフト制や夜勤が多い職場環境との両立が難しいため、育児休暇や時短勤務の制度が整っていない職場だと、やむを得ず離職を選択する方は多いでしょう。

50代は、親の介護が必要となるケースが増えてきます。介護の負担は大きく、フルタイムで働き続けることが難しくなります。

出典:日本病院会「看護師の確保状況に関する緊急調査(最終報告)
出典:厚生労働省「看護師等(看護職員)の確保を巡る状況

3.潜在看護師が復職しない・できない理由

潜在看護師が復職しない、または復職したいけれど現実的ではないと感じる理由について、詳しく見ていきましょう。

3-1.スキルに対する不安

医療技術は日々進歩しており、最新の知識や技術を習得するためには継続的な学習が不可欠です。そのため、数年間のブランクがあると、医療の進歩に追いつくために多大な努力が必要になります。

たとえば、電子カルテの使い方や、最新の医療機器の操作方法、新しい治療法のサポートなど、現場で求められるスキルは年々変化しています。このような背景から、ブランクのある看護師は「自分が現場で通用するのか」という強い不安を抱きがちです。

3-2.育児と仕事の両立に対する不安

出産や育児を機に看護師を退職した人は、育児と看護業務の両立に対する不安によって、復職できない場合があります。不安の主な原因は、子どもの預け先の問題や不規則な勤務形態に起因します。

たとえば、子どもの預け先が確保できないために、長時間勤務や夜勤ができない場合が多くあります。このように、保育所の空き状況や延長保育の有無、家族の協力体制などの条件が整っていないと、育児と仕事の両立は難しいでしょう。

3-3.ライフステージの変化

潜在看護師が復職を断念する理由の1つとして、ライフステージの変化によって職場との条件のすり合わせが難しくなることが挙げられます。

たとえば、親の介護が必要な場合、通勤に時間がかかる職場や夜勤の多い職場では、家庭との両立が難しいでしょう。家から通いやすい場所にある職場を希望していても、そのような職場が見つからず、復職できなくなる可能性があります。

このように希望条件が厳しくなるほどに、新しい職場が見つかりにくくなります。

3-4.復職支援体制が十分ではない

支援制度や復職支援体制が十分ではないために、復職に踏み出せない場合もあります。厚生労働省の資料によると、再就職をした看護師の約半数が再就職に関する支援や制度を活用していません。また、支援を求めている人の割合に対して、実際に支援を受けている人の数が極端に少ないのが現状です。

たとえば、夜勤の免除または夜勤回数の軽減は33.9%が求めていますが、9.7%の人しか利用できていません。そのほか、休日労働の免除や短時間勤務、時差出勤・フレックスタイムなども同様に、支援を希望している人と実際に支援を受けている人の数が剥離しています。

出典:厚生労働省「看護職員就業状況等実態調査結果

4.潜在看護師が復職を考える際におすすめの準備

潜在看護師がスムーズに復職し、自身の理想になるべく近い働き方を実現するためには、次の準備が必要です。

4-1.復職条件と課題を明確にする

復職にあたり、譲れない条件やクリアすべき課題を整理することが重要です。これにより、自分にとって最適な復職先を見つけやすくなります。

潜在看護師がスムーズに復職し、理想に近い働き方を実現するためには、まず復職条件と課題を明確にすることが重要です。まずは、下記のように自身の条件や課題を書きだしてみましょう。

  • 勤務可能な日数や曜日
  • 1日の就業可能時間
  • 雇用形態
  • 通勤時間
  • 最低賃金
  • 子どもの預け先や送迎、家事の分担などのサポート体制 など

たとえば、週3日、9時から15時までのパートタイム勤務、通勤時間は30分以内、最低賃金は時給1500円以上と設定します。このように、具体的な条件を整理することで、自分に合った職場を見つけやすくなります。

4-2.職場に求める条件を明確にする

次に、復職先に求める条件を下記のように整理し、優先順位をつけます。これにより、理想の職場環境が明確になり、ライフスタイルやライフステージに合った職場が見つかりやすくなります。

  • 希望する診療科や部署(病棟、外来、訪問看護など)
  • 病院規模
  • 勤務体制や勤務時間
  • 福利厚生や復職時のサポート体制
  • 子育て中の職員への支援 など

たとえば、子育てと両立したい場合は、緊急対応が少ない外来勤務で、勤務時間は子どもの送り迎えができるように9時から15時までと設定し、福利厚生として育児支援制度が充実していることを条件とするのが1つの方法です。

4-3.最新の看護知識の情報収集をする

医療技術や看護方法は日々進化しているため、現場での適応力を高めるためにも、最新情報を継続的に学ぶことが重要です。書籍や現場で働いている看護師の知人などから情報を得るのも1つです。

また、すき間時間に看護師向けの情報サイトやアプリで医療技術や現場知識などの情報を入手するのもよいでしょう。

4-4.家族に協力を求める

家族がいる潜在看護師が復職を考える際は、生活スタイルが変わることについて家族に伝え、協力を求めることが大切です。家事や子どもの送迎など、日常生活のさまざまな場面で調整が必要になります。

毎日の夕食作りや掃除など、今まで主に自分が担当していた家事を家族と分担する方法を決めましょう。配偶者が料理を担当し、子どもたちが掃除を手伝うなど、それぞれが役割を持つことで1人に大きな負担がかかる事態を防げます。

4-5.復職支援制度を活用する

潜在看護師が復職を目指す際、各自治体やナースセンターが提供する復職支援制度を活用することも1つの方法です。スキル面での不安を軽減し、心の準備を整えることができます。

たとえば、東京都ナースプラザが実施している「復職支援研修」は、実際の医療現場で研修を受けたり、学校で看護技術や知識を学び直したりできます。

東京都ナースプラザ「復職支援研修」

5.復職を検討する潜在看護師におすすめの職場や働き方

復職を検討する際は、自身の状況や不安の理由などに応じて職場や働き方を決めることが大切です。詳しく見ていきましょう。

5-1.ブランクに対する不安がある場合は「ブランクに理解がある職場を探す」

ブランクがあることへの不安を感じる場合は、「ブランクに理解がある職場」を見つけることが1つの方法です。

求人情報で「ブランク可」と明記されている募集を探しましょう。また、ブランクがある看護師向けの復職プログラムを提供しているかどうかも確認します。

さらに、書類選考や面接の際に、復職に対する不安を正直に伝えることも重要です。たとえば、「長期間現場を離れていたため、最新の医療技術についてのサポートを希望しています」と伝えることで、応募先のサポート体制を確認できます。

5-2.フルタイム勤務が負担な場合は「短時間勤務OKの職場を選ぶ」

潜在看護師の中には、フルタイム勤務が負担に感じる方も少なくありません。そのような方には、「短時間勤務OKの職場」を選ぶことをおすすめします。大きな負担をかけずに、業務内容や職場環境に慣れていくことができます。

多くの病院やクリニックでは、パートタイム勤務を募集しています。午前中だけや午後だけの勤務、あるいは週に数日の勤務から始め、少しずつペースを掴みながら出勤日数や勤務時間を増やすことも方法の1つです。

5-3.最新の医療現場に対する不安がある場合は「研修制度が手厚い病院を選ぶ」

最新の医療現場に対する不安を抱えている場合は、「研修制度が手厚い病院」を選ぶことが方法の1つです。中途採用者にもプリセプター制度を取り入れている病院や、充実した教育・研修プログラムがある病院を選ぶことで、安心して復職できるでしょう。

教育・研修プログラムの例は下記のとおりです。

  • 診察の準備や介助
  • 採血のシミュレーション
  • 創傷処置やドレーンの管理
  • 看護計画、看護記録について
  • 日常生活援助技術の指導 など

5-4.育児との両立が難しい場合は「託児所や院内保育がある病院を選ぶ」

育児と仕事の両立を希望する場合は、託児所完備や院内保育に対応している病院を選びましょう。また、育児中の職員に対する理解があるかどうかを確認することも大切です。

急に休むことになってもフォローが可能であったり、時間外労働が少なかったりする職場であれば、育児と仕事を両立しやすいでしょう。

6.まとめ

潜在看護師の復職には、適切な準備と支援が不可欠です。本記事では、潜在看護師の現状や復職が進まない理由、スムーズな復職を実現するためのポイントなどを解説しました。

看護師不足が深刻化する中で、潜在看護師の復職が医療現場の力強い支えとなることが期待されています。今回、解説した内容を参考に、自身の状況に合わせた働き方を見つけ、復職への一歩をぜひ踏み出してみてください。

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