【希少なお仕事】クルーズ船の看護師「シップナース」 船上の仕事内容や働き方とは?
シップナースという言葉を聞いたことありますか?
シップナースはクルーズ船や貨物船に搭乗している看護師で、求人はなかなか出てこないものの、給与水準も高く、海や旅行が好きな看護師はその働き方に憧れる方も多いでしょう。
しかし、一般的な病院勤務とは異なる点が多く、具体的な働き方をイメージできないという方も多いのではないでしょうか。 本記事では、シップナースの仕事内容やメリット・デメリット、収入、なる方法などについて詳しく解説します。
1.シップナースとは
シップナースは、クルーズ船や貨物船に搭乗し、乗客や乗員の健康管理を行う看護師のことです。乗客や乗員の怪我や体調不良の処置、薬剤管理や食事の提供におけるアレルギー対応など、業務は多岐にわたるため、幅広い知識と臨床経験が求められます。
搭乗する船の規模にもよりますが、少人数の看護師で医師と連携しながらこれらの対応を進めていきます。
また、海上での仕事は、長期間家を離れることがあるうえに、船酔いや長時間労働などの負担を伴いますが、その分、高い給与水準が設定されている傾向があります。
2.シップナースの仕事内容
シップナースの仕事内容は、病院やクリニックでの看護業務とは異なります。船内ではクルーズを楽しむことを目的に乗船した人々に対して、より快適に過ごしてもらうため常に健康状態に気を配る必要があります。
シップナースの仕事内容について詳しく見ていきましょう。
2-1.乗客・乗員の健康管理
シップナースの主な仕事は、乗客や乗員の健康管理です。定期健康チェックや持病の状態を確認することで、乗客や乗員の健康を守ります。クルーズ船では高齢者が多く乗船している場合もあるので、より細かく血圧測定や糖尿病の管理などが必要になります。
また、乗客や乗員からの健康相談に対して、必要に応じて適切な対応を行うことも仕事の1つです。
2-2.船内の薬剤管理
薬剤師が常駐しているわけではないので、船内で使用される薬剤の管理もシップナースの仕事です。在庫が少なくなってきたら必要に応じて発注し、緊急時に対応できるよう準備を整えておきます。
また、薬の使用期限をチェックし、期限が迫ったものは適切に処分するなど、細やかな管理が求められます。
2-3.乗客の服薬管理
乗客の中には、定期的に薬を服用する必要がある人もいます。シップナースは、乗客が忘れずに薬を服用できるよう、服薬時間になった際に声をかけるなどして服薬を促します。
2-4.急病や怪我の初期対応
船内で急病や怪我が発生した場合の対応もシップナースの仕事です。たとえば、乗客が船内で転倒して骨折した場合、シップナースは医師と共に応急処置を行い、その後の治療が必要であれば最寄りの港への緊急搬送を手配します。
2-5.船酔い患者の対応
長期間の航海では、悪天候によって船酔いを訴える乗客が多くなることがあります。シップナースは、船酔いを訴える乗客に対して服薬を促すことに加え、食事や適切な休息についてアドバイスすることで、快適に過ごせるようサポートします。
2-6.食物アレルギーの管理
シップナースは、食物アレルギーを持つ乗客が安心して食事を楽しめるよう、アレルギー物質の含有について事前に確認し、必要に応じて代替食を手配します。
3.シップナースの1日のスケジュール
シップナースの勤務形態は、一般的な病院やクリニックとは異なります。例えば、あるクルーズ船では、通常医師2名と看護師4名がチームを組んで働いており、勤務時間は寄港地での停泊時と航海時で異なります。
シップナースの航海時のスケジュール例は下記のとおりです。
シップナースの1日は、チーム全員でのミーティングから始まります。乗客や乗員の健康状況や、その日の予定について話し合います。また、乗客の中に慢性的な病気を抱えている人がいる場合は、必要な対応を検討します。
午前の診療時間中、シップナースは医師の診療業務をサポートします。乗客や乗員が体調不良を訴えた場合の初期対応や、船酔い、怪我などの処置を行います。
昼食時間は、他の乗員と同じく自由に取ることができます。しかし、緊急事態が発生した場合には対応が求められることがあります。休憩時間も、緊急時に備えて注意を怠らないことが重要です。
午後の診療時間は、午前と同様に、医師の診療業務をサポートします。午後は午前中に受診できなかった乗客や、新たに健康問題を抱えた乗客が多く訪れることで、忙しくなることも少なくありません。
診療患者があまりいない場合は、この時間に薬剤や物品の管理を行うこともあります。
診療時間が終了した後は自由時間となります。自由時間には、船内の施設でリラックスしたり、映画を観たりして過ごすことができます。夜勤はないですが、乗客や乗務員が急に体調を崩すこともあるのでオンコール体制を取っています。そのため、緊急時は対応が必要になります。
4.シップナースの平均年収や給料
シップナースの平均年収は600万~800万円程度であり、月給にすると50万円程度となります。拘束時間は搭乗する船によって異なりますが、夜勤や残業がほとんどないことを考えると、好待遇と言えるでしょう。
しかし、シップナースの仕事には特殊な側面も多く、待遇と仕事内容のバランスを考慮したうえで、自身に向いているかどうかを判断することが大切です。
5.シップナースとして働く上で考えられるメリット
シップナースが自身に向いているかどうかを考える際は、メリットとデメリットの両方を確認することが大切です。シップナースとして働くメリットについて、詳しく見ていきましょう。
5-1.高待遇と充実した福利厚生
シップナースは病院やクリニックと比較して給与が高く、福利厚生も充実している傾向にあります。また、船上での食事や宿泊が無料で提供されるため、生活費がほとんどかからず、貯蓄を増やしやすい環境です。
貨物船や長期のクルーズ船で働いた場合は、支出を抑えられることによって多額の貯金ができる場合もあるでしょう。
5-2.美しい海を眺めながらの仕事環境
シップナースは美しい海を眺めながら仕事ができるため、海が好きな人にとっては嬉しい環境と言えるでしょう。特に、緊急対応がないときや休憩中には自然に囲まれた穏やかな時間を過ごすことができるため、ストレスを軽減する効果も期待できます。
5-3.看護師としてのスキルアップ
シップナースは、多様な症例を少人数で対応することが求められるため、看護師としてのスキルを大幅に向上させることができます。たとえば、船酔いから軽度の怪我、さらには緊急事態において医師と連携して迅速な処置を行うなど、多岐にわたる業務を通じて実践的なスキルが身につきます。
5-4.長期休暇の取得が可能
シップナースの勤務サイクルには、長期休暇が組み込まれていることが特徴です。通常、2ヶ月から3ヶ月間の勤務期間を終えた後に、20日から30日間の長期休暇を取得できます。
休暇中は自由に過ごせるため、旅行や趣味、家族と過ごすことなどに時間を費やすことが可能です。
6.シップナースとして働く上で考えられるデメリット
続いて、シップナースとして働くデメリットについて、詳しく見ていきましょう。
6-1.勤務が長期にわたる
シップナースは、一度航海に出ると帰港するまで自宅に戻ることができません。期間中は常に船上での勤務となり、家族や友人との時間を作ることができなくなります。特に、家庭を持つ人にとって、数ヶ月間家を空けることは大きな負担となり得ます。
また、孤独感や精神的なストレスにつながる可能性もあるため、自身の生活スタイルや家庭状況などを踏まえて、長期の船上勤務が可能かどうかを考えることが大切です。
6-2.業務範囲が広く責任が重い
シップナースは、船上での医療スタッフが限られているため、多岐にわたる業務を担当します。薬の管理から、緊急時の対応、さらには乗員や乗客の健康管理に至るまで、広範な責任を担うことになります。
そのプレッシャーが大きな精神的負担となることもあるでしょう。
6-3.行動範囲が限られる
船上での勤務は行動範囲が限られることから、自由な時間を大切にする人にとってはストレスとなる可能性があります。たとえば、船内では同じ空間での生活が続き、外出して気分転換を図ることもできません。
6-4.自分に合った求人が見つかりにくい
シップナースの求人は非常に限られており、人気の高い職種であるため、競争率が高くなります。特に国内のクルーズ船では、募集が出ること自体が少なく、希望する条件での求人を見つけるのは容易ではありません。
シップナースとして働くことを希望する場合、求人情報をこまめにチェックし、機会を逃さないようにする必要があります。
7.シップナースになる方法
シップナースになるためには、必要なスキルを取得したうえで求人に応募し、選考を通過しなければなりません。シップナースに必要な資格とスキルや求人の応募先について、詳しく見ていきましょう。
7-1.必要な資格とスキル
シップナースとして働くために必要な資格は看護師免許のみですが、少なくとも3年以上の臨床経験が求められる場合が多いです。
その中でも、船上での急病や怪我の対応に迅速に対応できる救急医療の経験があると有利とされています。
また、シップナースにとって英語力も重要です。クルーズ船には多国籍の乗客や乗員が乗船することも多いため、英語でのコミュニケーションが求められます。特に、医療用語を含む専門的な英語が求められる場面も多く、緊急時には外国の医療機関と連携して患者を搬送することもあります。
そのため、シップナースには医療英語を含む高いレベルの英語力が必須となります。
7-2.シップナースの勤務先
シップナースの働き方としては、「船会社の正社員として働く」と「クルーズ会社との委託契約」の2つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
船会社の正社員として働く
シップナースとして働く方法の1つは、船会社の正社員として雇用されることです。客船や貨物船に配属され、長期間の航海に従事します。貨物船の場合、航海は通常数ヶ月から半年程度に及び、この間は船上での勤務が続きます。
一方で、客船に配属された場合、短期間のクルーズから長期間の世界一周クルーズまで、さまざまな航海に対応することが求められます。
正社員として雇用されるメリットは、安定した給与と福利厚生が提供される点です。船会社の正社員は、給与が高水準で設定されており、さらに船上での宿泊や食事が提供されるため、生活費が抑えられます。
クルーズ会社との委託契約
クルーズ会社と直接委託契約を結ぶ方法です。シップナースは契約社員として雇用され、乗船期間を選んで働くことができます。2〜3日の短期クルーズから、数ヶ月にわたる長期クルーズまで、契約期間はさまざまです。
委託契約のメリットは、フレキシブルな働き方が可能である点です。自分のライフスタイルやスケジュールに合わせて勤務期間を調整できるため、仕事とプライベートのバランスを取りやすくなります。
ただし、船会社の正社員とは異なり、契約期間が終了した後に次の乗船がない場合もあるため、収入が不安定になる可能性があります。
7-3.シップナースの求人の探し方
シップナースの求人は、看護師専門の転職サイトで取り扱われていることが多いため、サイトに登録しておくとよいでしょう。
また、日本のクルーズ船会社や、外国船の日本代理店の公式サイトで求人情報を確認する方法もあります。たとえば、商船三井客船の「にっぽん丸」や、郵船クルーズの「飛鳥Ⅱ」などが挙げられます。代表的な船と運営会社、それぞれの採用ページについては下記のとおりです。
船名 | 運営会社 | 採用ページ |
にっぽん丸 | 商船三井客船 | https://www.nipponmaru.jp/recruit/ |
飛鳥Ⅱ | 郵船クルーズ | https://jobs.asukacruise.co.jp/ |
ガンツウ | せとうちクルーズ | https://guntu.jp/recruit/ |
8.シップナース以外の海に関する仕事
シップナース以外にも、海に関連した看護や救護に従事する職種があります。特に夏の間に需要が高まるのが「海辺の救護ナース」です。
海水浴場やビーチで遊泳客の安全を守るために、怪我や熱中症、溺水時の応急処置を行うものです。美しい海辺で働くことができるというロケーションも、海が好きな看護師にとって魅力的でしょう。
また、マリンスポーツに関連する仕事として、「メディカルスタッフ」として団体に同行する方法もあります。ダイビングやサーフィンなどのマリンスポーツに参加する人の健康管理や緊急時の対応を行います。
例えば、ダイビングツアーに参加する場合には、減圧症のリスクがあるため、専門的な知識を持ったメディカルスタッフが求められます。
9.まとめ
シップナースは、クルーズ船や貨物船などの船舶に搭乗し、航海中の医療業務に従事する看護師であり、病院やクリニック勤務とは異なる環境で幅広い対応が求められます。本記事では、シップナースの仕事内容やメリット・デメリット、収入、必要なスキルや勤務先例などを解説しました。
シップナースは、看護師としてのスキルを磨けるだけではなく、自身が好きなロケーションで働くことができます。本記事の内容が、シップナースとしての適性を判断する際のお役に立てれば幸いです。
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