美容クリニックの看護師として働きたい方必見|仕事内容や給与などを徹底解説
医療美容の需要増加に伴い美容クリニックで働く看護師の採用ニーズが年々高まっています。さらに、残業が少なく、夜勤もないといった職場環境であることから、看護師を目指す方にも人気があります。
しかし、美容クリニックは一般診療科と比較して異なる点もあり、
「仕事内容や給与などがイメージできない」
と感じている方も多いでしょう。
そこで今回は、美容クリニックで働く看護師の仕事内容や給与、1日のスケジュールなどを解説します。
1.美容クリニックとは?特徴や一般診療科との違いは?
美容看護師とは、美容を目的とした治療や施術をおこなうクリニックや病院で働く看護師のことです。
ここでは、美容クリニックの特徴や一般診療科の違いについて解説します。
1-1美容クリニックの特徴
美容クリニックとは、整形手術やレーザー脱毛など、「美容医療」を提供する医療機関のことです。
美容クリニックのほかにも、施術内容などに応じて「美容外科」「美容皮膚科」「ビューティークリニック」などと呼ばれることもあります。
なお、エステティックサロンも美容に関連するサービスを提供していますが、医療行為を提供できないことが美容クリニックとの違いです。
1-2.一般診療科との違い
美容クリニックと一般診療科は、医療行為を提供する点は共通しています。しかし、以下のとおり医療を提供する目的が異なります。
【美容医療と一般診療科の医療目的の違い】
- 美容医療:外見の美しさを追求する目的で医療行為を行う
- 一般診療科:健康でいるために疾患の治療や健康問題の改善を目的として医療行為を行う
美容医療は、通常の医療と同様に生体侵襲を伴いますが、治療を行うことに対して緊急性はありません。また、医学的に必要というわけではなく、患者の求める願望を満たすためであることから自由診療となります。そのため、費用は全額負担となり高額になる傾向にあります。
一方、健康を目的とした医療行為を行う一般診療科は、診療報酬によって料金が定められており、患者の負担割合は1~3割程度です。
参考:日本看護倫理学会誌 VOL.12 NO.1 2020「美容医療に携わる看護師の倫理観」
2.美容クリニックの種類と仕事内容
美容クリニックは、「美容皮膚科」と「美容外科」の2種類に大きく分けられます。
ここでは、2種類それぞれの詳細と1日のスケジュールを見ていきましょう。
2-1 美容皮膚科
美容皮膚科は、美しい肌を作ることを目的として、医療行為を行います。
具体的には、内服薬や外服薬、サプリメントの処方のほか、レーザー治療や点滴、注射、レーザー脱毛など、最先端の技術・機器で美肌作りを提供しています。
「シミを消したい」「毛穴の開きを改善したい」など、皮膚疾患ではなく、さらなる美肌を求める患者さんが対象になります。
2-2.美容外科
美容外科は形成外科の一種であり、二重整形や豊胸手術、鼻を高くする隆鼻術、顔のたるみをとるフェイスリフト、脂肪吸引といった外科的な手術を提供します。
つまり、美容外科は肌に特化した美容皮膚科とは異なり、外科的な手術を通して、顔や身体の構造・形を美しく変える施術を行います。
2-3.美容クリニックで働く看護師の1日のスケジュール
美容看護師として働くうえで、1日のスケジュールが気になる方も多いでしょう。ここでは、美容看護師の1日のスケジュールの一例を紹介します。
時刻 | 業務内容 |
09:30 | 出勤 ・開院準備 ・朝礼 ・予約確認 ・施術準備 ・施術ルームやカウンセリングルームの準備 など |
10:00 | 患者受付開始 ・受診者の対応処置の準備、実施 ・片付け ・オペ介助カルテ記入 など |
12:00 | 昼休憩 |
13:00 | 午後の施術開始 ・受診者の対応処置の準備、実施 ・片付け ・オペ介助カルテ記入 など |
18:00 | 片付け・翌日準備 ・各ルームの片付け物品の補充 ・翌日の予約確認 ・翌日の準備事務作業 など |
19:00 | 退勤 |
以上が基本的な美容看護師の一日となります。
美容クリニックは開院時間が遅いため、診察が終了し、退勤するのが20時以降になるクリニックも珍しくありません。診療時間が長いクリニックは、交代制の勤務形態を採用しているところもあります。
しかし、美容クリニックは完全予約制のところが多いため、緊急対応が発生しにくく残業が少ない職場です。さらに、夜勤もないため働きやすい環境であるといえるでしょう。
3.美容クリニックで働く看護師の給与
大手看護師求人サイトに掲載された内容を参考にすると、美容クリニックで働く看護師の平均年収は500〜600万円で、月給で見ると30〜40万円でした(※1,2)。
一方、日本看護協会の2023年病院看護実態調査によると、看護師全体の月額平均基本給与額は24万7,629円、平均税込給与総額は32万6,675円(2023年度実績)でした(※3,4)。
このように、美容看護師は、一般診療科で働く看護師と比較して、給与水準が高いといえます。転職で年収が100~150万円アップしたというケースも少なくありません。
※1調査方法:3つの大手看護師求人サイトに掲載された求人より算出(2024年4月時点)
※2経験年数やスキルなど、求人ごとに条件が異なるため幅があります。あくまで参考値としてご理解ください。
※3税込給与総額には、通勤手当、住宅手当、家族手当、夜勤手当、当直手当、看護職員処遇改善等事業に基づく手当等を含む(時間外勤務の手当及び新型コロナウイルス感染症に係る危険手当等は除く)
※4夜勤をした場合には、当該の月に三交代で夜勤 8 回(二交代で夜勤 4 回)をしたものと想定
3-1.美容クリニックで働く看護師の給与が高い理由
美容看護師の給与水準が一般診療科で働く看護師と比較して高いとされているのはなぜでしょうか。
ここではその理由について詳しく解説します。
【理由1】自由診療のためクリニックが独自に施術金額を決められるから
先に解説したとおり、美容クリニックは自由診療が基本です。自由診療の場合、提供するサービスや価格はクリニック側が自由に決められます。
そのため、一般診療科と比較して美容クリニックは収益が確保しやすく、利益を給与として看護師に還元しやすいのです。
【理由2】インセンティブ制度を導入している美容クリニックが多いから
インセンティブ制度を導入している美容クリニックが多いことも、給与水準が高い理由の一つです。
美容看護師におけるインセンティブ制度とは、獲得した契約数や医薬品や化粧品の販売実績に応じて、成果報酬が支払われるというものです。
インセンティブ制度があると、努力次第で給与アップが叶いやすく、結果的に業界全体の給与水準が高くなっているといえます。
4.美容クリニックの看護師になる方法と役立つ資格
一般診療科の看護師と比較して、美容看護師は給与水準が高いことなどから、
「美容看護師として働きたい」
と考えている方も多いでしょう。
ここでは、美容看護師になるための方法や、働くうえで役立つ資格を解説します。
4-1.美容クリニックの看護師のなり方
美容看護師になるには、一般診療科の看護師として3年ほど経験を積み、注射や点滴などの基本的な手技を学んでおくと転職候補となる美容クリニックが増えます。
ただし、美容看護師は穿刺や手術介助のスキルが求められることから、経験が浅い状態で採用されても、対応できる業務が限られる可能性がある点には注意してください。
最近では美容クリニック側の採用ニーズが高まっていることから、新卒採用を実施しているところも少なくありません。大手の美容クリニックの場合、研修制度が充実しているところも多く、一定期間の研修の後、現場へ配属されるパターンが多いです。
また、年齢制限はないものの、美容クリニックは美を提供する場所であるという特性上、年齢の若さや外見が選考で加味される場合もあります。
4-2.働くうえで役立つ資格
看護師免許は国家資格にあたる「正看護師」と都道府県認可資格の「准看護師」2種類があり、どちらの資格でも美容看護師になれます。
しかし、正看護師は医師や歯科医師からの指示を受けなくても業務を行える資格があるため、働くうえで裁量を与えられやすく、対応業務の幅を広げやすいでしょう。
その他にも美容看護師の業務に役立つ資格として、日本化粧品検定やスキンケアアドバイザー、認定エステティシャンなどがあります。これらの資格は美容看護師に転職する際のアピールポイントとしても活用でき、施術やカウンセリングなどに組み込むことも可能なので美容看護師との相性が良い資格です。
5.美容クリニックで働く看護師のメリット
医療関係の職種のなかでも、美容看護師はメリットが多く人気の高い職種の一つです。
ここでは、美容看護師として働くメリットについて見ていきましょう。
5-1.ワークライフバランスのよい職場が多い
美容クリニックで働く看護師は、一般診療科の看護師と比較して、ワークライフバランスが良好な職場が多いことがメリットです。
美容クリニックは、入院施設がないため夜勤がないところが大半です。さらに、完全予約制で診察・処置を行うため、緊急対応や残業もほとんど発生しません。
そのため、美容看護師として働きながら、プライベートな時間を確保しやすい職場であるといえるでしょう。
5-2.美容の知識が身に付く
美容看護師として働くことで、美容に関する専門的な知識や技術を習得できることもメリットです。
最新の美容医療や製品について学ぶ機会が多く、自身の美容意識も高まります。美容に興味がある方にとっては魅力に感じられるでしょう。
5-3.好立地なクリニックが多い
美容クリニックは、都市部の中心地や駅近に位置していることが多く、通勤しやすいこともメリットです。
さらに、クリニック周辺にはショッピングエリアやカフェ、レストランが充実していることが多く、仕事帰りにプライベートの時間を楽しみやすいでしょう。
退勤後にジムや英会話レッスンに行きたい、買い物を楽しみたいといった方におすすめの環境です。
6.美容クリニックで働く看護師のデメリット
美容看護師として働くことはメリットが多い一方で、デメリットもあります。
ここでは、美容看護師として働くデメリットを解説します。
6-1.平日の休みが多くなりやすい
美容クリニックは、患者の来院が多い土日や祝日に営業していることが多いため、休日が平日に偏りがちです。
そのため、土日祝や大型連休の休みが取りにくく、友人や家族と休みが合わせづらいことがデメリットとして挙げられます。
平日に人混みを避けて出かけられるなどのメリットもありますが、一般的な休みと言われるタイミングで休みにくいのはデメリットに感じることがあるでしょう。
6-2.接客スキルが求められる
美容クリニックは、健康な人を対象にした自由診療を行う場であり、サービスやホスピタリティが求められることから高い接客スキルが必要です。
患者に対するカウンセリングを通して最適な施術を提案したり、美容に関するアドバイスを行ったりといったように、一般診療科の看護師と比較して、患者と会話をするシーンが多いという特徴があります。
そのため、一般診療科の看護師と比較して、必要な接客スキルは高くなるでしょう。
もちろん、一般診療科の看護師として働く場合も、一定以上の接客スキルは必要ですが、美容看護師の方が求められるレベルが高いことが注意点です。
6-3.臨床経歴としてカウントされない場合がある
美容クリニックの患者は健康な人であり、扱う症例や器具、機械が一般診療科とは異なります。そのため、美容看護師としての勤務経験は、臨床経歴としてカウントされないケースがあることもデメリットでしょう。
たとえば、一般診療科の看護師として3年間勤務し、その後、美容看護師として3年間働いて、再び一般診療科の看護師へ転職する場合を想定してみましょう。
その際、実際には6年間の職務経歴があるものの、看護師としては3年間のブランクがあると判断され、転職時に不利になることがあるのです。
美容看護師から一般診療科の看護師へ転職できないとは言い切れませんが、ハードルが高くなることは懸念点であるといえます。
7.美容看護師によくある質問
最後に、美容看護師によくある質問を見ていきましょう。
7-1.美容から臨床へ復職できる?
デメリットで解説したとおり、美容看護師としての勤務経験は、臨床経歴としてカウントされないケースがあります。
そのため、一般診療科の看護師へ転職する際、ブランク扱いされて不利になることがあります。また、転職を検討しているものの、扱う症例や器具・機械が一般診療科とは異なるため、看護技術を忘れてしまったという声も少なくありません。
ただし、美容看護師から一般病棟への転職ができないわけではありません。美容看護師として働く前に病棟で勤務した経験があるといった場合は、転職のハードルがそれほど高くならないケースもあります。
そのため、美容看護師として働きたいと考えている方は、あらかじめ将来的なキャリアについても検討しておきましょう。
7-2.育児・子育てをしながら美容看護師として働くことは可能?
育児や子育てをしながら、美容看護師として働きたいと考えている方も多いでしょう。
美容クリニックの営業時間はおおよそ20時までかつ土日祝や大型連休は休みにくいというのが基本です。
そのため、遅番出勤や土日祝の出勤が必要になるところが多く、子どもが小さいうちは育児や子育てをしながら働くのはむずかしい可能性が高いでしょう。しかし、育児や子育てへの理解があり、早番勤務を中心にシフトを組んでもらえる美容クリニックもあります。
また、保育園に預けられる時間によっても変わるため、入社時に院長と相談するなどして、育児や子育てとの両立ができるか検討してみることが大切です。
7-3.売上ノルマはある?
ノルマの有無は、美容クリニックによって異なります。
ただし、個人的なノルマを設定するところは少なく、クリニック全体でノルマを掲げているところが多い傾向にあります。
また、ノルマを達成した場合はインセンティブが発生するところもあります。
ノルマやインセンティブがあることで、モチベーションを維持しやすい人もいれば、ストレスに感じやすい人もいるため、働きたい環境に合わせて美容クリニックを選ぶのがおすすめです。
8.まとめ
今回は、美容クリニックとは何か、美容看護師の仕事内容や給与、1日のスケジュールなどを解説しました。
美容看護師は、基本的に日勤のみの勤務であるうえに、残業が発生しにくい職場環境です。さらに、高収入で美容の知識も得られることから、人気の職種です。
しかし、高い接客スキルが求められることや、臨床としてカウントされないことがあるといった注意点もあるため、自身のキャリアややりがいなどを考えてクリニックを選ぶことが重要です。
ぜひ今回の記事を参考に、美容看護師として働くキャリアについて検討してみてください。
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