健診・検診センターで働く看護師とは?働き方や仕事内容について解説
健診・検診センターは基本的に残業や夜勤がなく、カレンダー通りの休みが取れるなど、ワークライフバランスを重視したい看護師から注目度が高い職場です。
これだけを聞くと病院やクリニックと比べてゆとりを持った働き方ができるように感じますが、一方で健診・検診センターならではの業務特性もあり、人によっては大変だと感じる方もいるようです。
今回は、健診・検診センターではどのような働き方をするのか、具体的な業務内容や働くために知っておきたいことを解説します。
1.健診・検診センターとは
健診・検診センターとは、健康状態を把握し、病気予防や早期発見、早期治療をするために様々な検査を行う施設です。
しかし、厳密に言うと「健診」と「検診」の意味を少し異なります。
本章では、その違いに着目しながら健診・検診センターの特徴を解説していきます。
1-1.健診センターと検診センターの違い
健診と検診の違いは、下記の表の通りとなります。
健診センター | 検診センター | |
内容 | 健康診断 | がんなど判定の病気の検査 |
目的 | 現在の健康状態の把握・病気予防 | 病気の早期発見・早期治療 |
代表的な検査 | 定期健康診断、特定健康診断、学校健診 | 対策型検診、任意型検診 |
健診センターでは、「労働安全衛生法」に基づき企業が従業員に対して実施を義務付けられている健康診断や、「学校保健安全法」第十三条で規定されている学生の健康診断を実施しています。
主に現時点の健康状態を把握し、病気予防を目的として行われていると言えるでしょう。
検診センターでは、胃がんや大腸がん、乳がんなどの特定のがんや病気を早期発見するための検診を実施しています。検診を通じて、特定の病気の早期発見と早期治療が目的となっており、受けるかどうかは受診者の任意です。
特定の年齢の社員や住民に対して無料で実施したり、希望者は格安で受けられるよう企業や自治体が検診の受診向上のために後押ししたりする施策を取っています。
健診と検診の違いを詳しく解説した記事はこちら▼
健診と検診の違いとは? 目的や検査内容、選び方まで「ケンシン」を解説
1-2. 健診・検診センターは2種類に分かれる
健診・検診センターには独立型と病院付属型の2タイプがあります。
【独立型】
独立型の健診・検診センターは、その名の通り健診と検診専門の施設です。人間ドッグを取り扱っている施設もあります。
一般的な病院・クリニックのような外来診療や入院施設はありません。ただし、一部の施設では、ホテルなどと提携しているケースがあり、おもてなしや高級感にこだわったサービスを行うプランを設けているケースもあります。規模が大きいため、午前・午後に分けて一日で数百人規模の受け入れ態勢が整っている施設が多いのも特徴です。
また、胸部レントゲン検査や心電図検査などの検査機能を備えた健診バスで企業や市区町村・学校などに出向くこともあります。
【病院併設型】
病院併設型は、総合病院やクリニックの中で診療科の一つとして取り扱っています。
胸部レントゲンなどの検査施設は外来や病棟と共用で、受付時間が午前中などに限定されているケースが多く、受診者も1日当たり数十名と少なめです。
独立型と同じように、健診バスで出向くこともあります。
2.健診・検診センターで働く看護師の仕事内容と期待されること
健診・検診センターの違いと職場について理解を深めたところで、気になるのが仕事内容と期待されることではないでしょうか。
本章では主に独立型の健診・検診施設での看護師の具体的な仕事内容と期待される役割について解説します。
2-1.健診・検診センターの仕事内容
健診・検診センターの仕事内容は、施設の規模によりますが、採血や身体測定、診察介助などの業務を役割分担し、担当になった業務を繰り返し行う場合が多くなります。
1日に100人以上を受け入れる施設などもあるため、迅速かつ的確に検査や測定を行うことが求められます。
ここでは、健診・検診センターでの仕事内容を細かくみていきましょう。
・各種検査の測定及び補助業務
身長や体重、血圧、視力、聴力、各種検診の測定や補助業務を行います。心電図や胸部レントゲン検査では、臨床検査技師や放射線技師のアシスタントとして受診者の対応をします。
また、施設内は多くの受診者で混雑するだけでなく、人によって検査項目が異なるため、次にどの場所へ行ったらいいのかを素早く判断し、案内と誘導も必要です。
・採血技術
血液検査のための採血を行います。血液検査は健診・検診では必ず入っている項目です。多くの受診者の採血を行い、万が一気分が悪くなった受診者がいた場合はそのフォローも必要です。
血管の向きや採血のしやすさは受診者によって個人差が大きく、どんな受診者でも的確に採血可能なスキルが求められるでしょう。
・受診者の正確な健康状態の把握
受診者の診察は医師が行いますが、健康状態に問題がないかを観察し、把握することが大切です。緊張している受診者だけでなく、まれに採血などで気分が悪くなる方もいるため、顔色や汗、体温の状態を冷静に把握することが求められます。
・健診および検診結果の入力
健診及び検診結果をシステムへ入力し、出力、印刷、封入等の作業を行います。
結果を速やかに処理し、受診者に届けるために正確で確実な処理をすることが必要です。施設によっては、事務部門がこれらの処理を行い、看護師は健診および検診の測定や補助対応のみという所もあります。
2-2.健診・検診センターで期待されること
健診・検診センターでは、採血などの看護技術だけでなく、受診者の不安を取り除いたり、おもてなしのホスピタリティ精神が求められます。
例えば、採血に不安や恐怖を抱く受診者に対し、痛みのない素早い処置も大切ですが、安心して検査を受けてもらえるよう笑顔や細かな配慮が必要です。
また、他の検査についても不安に思う気持ちを解消し、気持ちよく受診してもらうための声掛けや対応は必須だと言えるでしょう。
人間ドッグや宿泊を伴う最新の健診・検診センターの中には、高級ホテルのようなサービスを提供している施設もあります。利用者もその手厚いサービスと医療を求め訪れています。単に検査の測定や補助、案内だけでなく、心地よく過ごしてもらえるようなおもてなしの気持ちを持ってサービスすることが求められる場面も出てくるでしょう。
3.健診・検診センターで働く看護師の一日
健診・検診センターで働く看護師の一日の流れは、次の通りとなります。
施設によって受診開始時間は異なりますが、おおむね8:30または9:00となります。そのため、出勤時間は前後することがあるでしょう。一日のスケジュールを午前と午後に分けて詳しく解説します。
出勤し、制服に着替えます。
その日の受診者数の確認と担当する業務の確認、朝礼や全体ミーティングが行われます。その後、各担当に分かれて使用する器具や備品の準備をします。
各担当に分かれて使用する器具や備品の準備をし、午前中の受診者対応をおこないます。
大きな施設の場合は、担当業務を繰り返し行いますが、小さな施設の場合、複数の業務を1人で行うこともあります。例えば、身長や体重の測定と採血、血圧測定、視力検査を全部行うといった形で、複数自分でこなすケースもあります。
休憩をとります。
施設によって早番、遅番とタイミングをずらしているところもあり、11:30~13:30頃の間でその日の担当業務の都合や人員構成によって前後することもあるでしょう。
午後の健診の対応を行います・対応がない場合はその日の健診の取りまとめを行います。
受診者数と回収した健診用紙の数の照合、データの入力をおこないます。血液検査など、測定を外部機関へ委託している場合は担当者がその日に採取したものを取りに来ますので、数などに間違いがないかを確認し、受け渡します。
血液検査等の外部委託していた検査結果が届き次第、取りまとめと印刷、封入作業の事務作業と、翌日の準備をします。
定時で退勤することが大半です。ただし、その日の測定データは当日処理が基本となるため、量によっては残業が発生する日もありますが、そこまで多くない傾向にあります。
参考:厚生労働省「看護職のキャリアと働き方 支援サイト」
4.健診・検診センターで働く看護師の給与
健診・検診センターで働くことを想定した場合、気になるのが給与ではないでしょうか。病院勤務で夜勤シフトも含めて働く場合と比較し、どれくらいの相場なのかを知っておくことは、キャリアを選ぶ上でも大切なことです。
地域や施設規模による差はありますが、看護師全体の平均年収は480万~500万円、健診センターで働く看護師の年収相場は、年収350万~400万円程度となっています。
看護師全体の平均と比較して、低いと感じる方がいるかもしれません。その分、残業や夜勤もなく、カレンダー通りの休日であることが多いため、ワークライフバランスやプライベートを大切にして働きたい方にとっては魅力的な職場だと言えそうです。
あわせて読みたい記事はこちら▼
看護師の貯金事情は?1,000万円を貯金するためのコツも紹介
5.健診・検診センターで看護師が働くメリット
実際に健診・検診センターで働くことを検討する上で、メリットを把握しておくことは自分に合った職場選びをするために大切なことです。
どんなメリットがあるのでしょうか。
【メリット1】残業が少なく夜勤がない
健診・検診センターでは、病院の外来診療のように日によって受診者の数が大きく変動するということはありません。
受診者はあらかじめ日時を予約してから来るため、その日の業務量が事前に把握でき、仕事の段取りを組みやすく、残業が少ない施設が一般的です。
また、夜勤もないため、規則正しい生活を送りやすいでしょう。
【メリット2】重症患者の対応がなく定型的な対応が中心
健診・検診センターには救急機能や外来機能がないため、重症患者が診察を求めてくることはありません。また、健診・検診業務は決まった内容の検査、測定を行いますので、決まった手順を手際よく処理することから突発的な業務はほとんど発生しないと言ってもいいでしょう。
【メリット3】採血技術を活かせる・伸ばせる
健診・検診には血液検査が必ずあります。そのため、採血業務を担当した場合、素早く確実に一日で数百人の採血を行うことになります。
採血を多く経験することで、得意な方はスキルを活かせますし、さらに伸ばすことができるでしょう。
6.健診・検診センターで看護師が働くデメリット
健診・検診センターの就業環境が合う方がいる一方で、中には今後のキャリアの積み方や志向によっては合わない方もいます。続いて、デメリットについても紹介します。
【デメリット1】臨床経験を積むことが難しい
健診・検診センターでは、決まった項目の測定・検査を行います。また、病棟機能も持っていません。
そのため、病院のように様々な症状を抱えた患者を対応することはなく、決まった業務を淡々とこなすため臨床経験を積むことは難しくなります。キャリアを考える上では、病院への復帰がしづらくなる可能性もあるでしょう。
【デメリット2】受診者一人一人に向き合う時間が短い
健診・検診センターでは決められた項目の測定、検査をテンポよく行う必要があります。一日で多くの受診者の対応をするため、一人一人に対して向き合う時間は短く、患者と関わることにやりがいを感じる方にとっては物足りなく思うかもしれません。
【デメリット3】同じ作業が多くなり人によってはきつく感じる
健診・検診センターでは、日によって担当する検査、測定業務が変わるものの、その日はずっと同じ対応を繰り返すのが一般的です。
そのため、同じ作業が何時間も続くという状況となり、人によっては精神的にきついと感じられる方もいます。
7.健診・検診センターで働きたい看護師のよくある疑問
実際に健診・検診センターで働きたいと考える看護師からよくある質問を集めました。
- Q1.健診・検診センターに受かる看護師とは?志望動機をどう書いたらいい?
-
健診・検診センターに応募して受かる方は、3年以上の臨床経験があり、採血経験が豊富または得意な方、老若男女問わずコミュニケーションを取ることが得意で人当たりのいい方が受かりやすい傾向にあります。
特に、採血については血液検査が必須のため苦手だという方が受かるのは難しいでしょう。
志望動機については、予防医学に携わりたい、健診・検診を通して人々の健康維持に貢献したいなど、臨床とは違った目線で受診者に関わりたいという視点を出すといいでしょう。
くれぐれも、残業が少ない、夜勤がなくて体力的に楽といった本音が伝わらないような形にまとめることが大切です。 - Q2.健診・検診センターに繁忙期はあるの?
-
繁忙期はあります。企業の異動や入社が多い3月~5月頃、学校で進学・進級がある4月~6月頃は多い傾向です。
ただし、一日の受診者は事前に判明しており、場合によっては単発のアルバイトを雇うなど臨機応変な人員調整もありますので、過度に残業が増える心配はありません。 - Q3.健診・検診センター勤務は病棟勤務に比べてきつい?
-
人によって感じ方や考え方は違うため、一概にきついとは言い切れません。
例えば、患者とじっくり向き合いたい、臨床経験を積みたいと考える方にとってはルーティンワークが多い健診・検診センターの仕事に満足感を得られず、きついと感じる可能性はあります。一方で、ルーティンワークが苦にならず、採血が得意で、ワークライフバランスを大切にした働き方をしたい方や、夜勤をこなせない事情がある方にとっては魅力的と感じるかもしれません。
ご自身のキャリアプランやライフプランなどに合わせ、柔軟に考えてみるといいのではないでしょうか。
8.まとめ
以上、健診・検診センターで働く看護師の仕事内容から求められること、給与、メリットやデメリットを解説しました。
人によってやりがいを感じるポイントや求めている環境は違います。
健診・検診センターの働き方に対し、具体的なイメージを持っていただけるきっかけになれば幸いです。
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