メイクセラピー(化粧療法)の効果とは?メイクセラピストとして働く方法も解説

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近年、メイクセラピー(化粧療法)は心のケアが重視される医療・福祉業界でも関心が高まりつつあり、特に高齢者の心身の健康や生活の質(QOL)向上を目指すケア方法として注目されています。

また、新たなセラピー療法として活躍の場が広がることも期待されており、看護師の方にとってはもちろんですが、美容を仕事としたいと考えている方のキャリアの選択肢の一つです。

この記事では、メイクセラピー(化粧療法)の概要やなり方、活躍する場などを解説していきます。

目次
  1. 1.メイクセラピー(化粧療法)とは
  2. 2.メイクセラピー(化粧療法)に期待できる効果
    1. 2-1.心理的効果
    2. 2-2.社会的効果
    3. 2-3.生理学的効果
  3. 3.メイクセラピー(化粧療法)を取り入れるときの注意点
    1. 3-1.美容師免許が必要になる場合がある
    2. 3-2.肌に優しくメイクオフしやすいものを使う
    3. 3-3.高価なものではなく手に入りやすいリーズナブルな定番品を使う
    4. 3-4.患者の肌状態や疾患に注意する
  4. 4.メイクセラピー(化粧療法)を行う際のポイント
    1. 4-1.患者の希望をしっかりヒアリングする
    2. 4-2.複数人でメイクセラピー(化粧療法)を実施する
    3. 4-3.美容のプロのアドバイスを取り入れる
  5. 5.メイクセラピストとは?どうやったらなることができる?
  6. 6.メイクセラピストを目指すのにおすすめの資格5選
    1. ・メイクセラピー検定
    2. ・日本メイクアップ技術検定試験3級
    3. ・日本化粧品検定
    4. ・こころ検定
    5. ・メンタルケアカウンセラー
  7. 7.メイクセラピストの役割と活躍する場所
    1. ・医療機関(皮膚科・形成外科)
    2. ・介護・福祉施設
    3. ・エステサロン(美容業界)
    4. ・就活や婚活などのアドバイザー
    5. ・美容部員(化粧品メーカー)
    6. ・講師(専門学校または講座)
  8. 8.実際にメイクセラピストとして働く方の声
    1. 8-1.高齢者看護を経た後メイクセラピストに
    2. 8-2.メイクセラピー外来で働く
  9. 9.まとめ

1.メイクセラピー(化粧療法)とは

メイクセラピー(化粧療法)は、心理学とメイクアップ技術を合わせた心理療法の一種です。外見の美しさを追求するだけではなく、メイクを通じて内面のポジティブな変化を促し、自己肯定感を高めることを目的としています。

メイクセラピー(化粧療法)では、カウンセリングを通じて患者の心理状態や抱えている課題・コンプレックスを把握し、その方に合ったメイクアップを提案・実践します。メイクの色や質感、テクニックなどを駆使して、患者の感情や思考に前向きな変化をもたらし、自己表現やコミュニケーション能力の向上を支援します。

美容業界だけでなく、医療・福祉分野でも注目され、高齢者だけでなく障がい者の心理的なケアにも活用されています。

2.メイクセラピー(化粧療法)に期待できる効果

メイクセラピー(化粧療法)には、期待できる効果がいくつかあります。
本章では、期待できる具体的な効果について解説します。

2-1.心理的効果

外見の変化を通じて内面に働きかけ、心理的効果をもたらします。

加齢によるしわやしみ、肌の弾力低下などで自分に対して自信が持てず、消極的になるケースもありますが、メイクすることによって自己肯定感が高まり、自信を持つことで積極性が向上します。

また、気分転換やリラックス効果も期待でき、前向きで活動的な気持ちを引き出すことができます。

2-2.社会的効果

心理的効果によって自己肯定感が高まり、コミュニケーションで好影響を及ぼします。

自己肯定感の向上は、他者との良好な関係構築、積極的な地域などのコミュニティ参加を促し、社会生活の維持にも貢献します。

2-3.生理学的効果

メイクセラピーによる生理学的効果には、下記のようなものがあります。

・認知機能低下の予防と維持

視覚など五感への刺激や脳の活性化を通じて、認知機能の予防と維持に貢献します。

メイクによる色彩の鮮やかさや肌・道具を扱う動作、スタッフとの会話は視覚・触覚・聴覚などに作用によって脳に刺激を与えます。さらに、化粧をすることによる自己表現は気持ちを高揚させ、笑顔を引き出します。

これらの効果によって認知機能の低下を抑制し、生活の質を向上させることが期待されます。

・口腔ケアのきっかけ

メイクセラピーは、外見への意識を高め、笑顔を増やすことで口腔ケアへの関心を促します。口角を上げることや笑顔を作ることで、口腔周りの筋肉を使い、唾液の分泌を促すだけでなく、歯科治療にも注意を向けるきっかけとなります。

また、メイクを楽しむことで、口腔ケアへのモチベーションを高め、積極的な治療への意欲を促します。

参照:公益財団法人長寿科学振興財団「高齢者の食事と栄養、口腔ケア」 p.183,184

3.メイクセラピー(化粧療法)を取り入れるときの注意点

メイクセラピー(化粧療法)を取り入れる際、いくつか注意点が存在します。
本章では、気を付けるポイントを解説します。

3-1.美容師免許が必要になる場合がある

メイクセラピー(化粧療法)を他者が行う場合、に美容師免許が必要となる場合があります。その理由は、美容師法によって次のように定められているためです。

・「美容」とは「パーマネントウェーブ、結髪、化粧等の方法により、容姿を美しくすること」(第二条)
・美容師でなければ、美容を業としてはならない(第六条)

引用:e-Gov 法令検索「美容師法」

他者に対してメイクセラピーを行うことは、「美容を業とする」と解釈される可能性があり、美容師免許が必要となります。

ただし、メイク指導のみを行う場合や、美容部員が化粧品の使用方法を説明するような場合は、美容師免許が不要となるケースもあり、実施前に確認しましょう。

3-2.肌に優しくメイクオフしやすいものを使う

メイクは肌に優しく、メイクを落としやすいものを使うことが大切です。
基本的に、メイクセラピー(化粧療法)実施後は、患者が自分でメイクを落とし、洗顔します。
市販のメイク落としで簡単に洗顔できる化粧品を使うようにしましょう。

3-3.高価なものではなく手に入りやすいリーズナブルな定番品を使う

化粧品は、安価なものから高価なものまでさまざまなものが存在します。
メイクセラピー(化粧療法)では、患者が自分でも購入しやすいリーズナブルな定番品や色味を使うようにすると、自分でメイクに挑戦しやすくなり、実施後の効果も上がります。
限定色や高級品ではなく、身近なドラッグストアなどでも買いやすい定番品が喜ばれるでしょう。

3-4.患者の肌状態や疾患に注意する

患者の肌状態や疾患にも注意が必要です。
一見すると肌状態に問題がなさそうに見えても、肌が過敏な方もいれば、乾燥、特定の成分にアレルギーやかぶれを生じやすい方も存在します。

始める前に患者から肌の状態やアレルギーの有無をヒアリングし、メイクセラピーをおこなえる肌状態か目視でしっかりと確認してから行うようにしましょう。

4.メイクセラピー(化粧療法)を行う際のポイント

メイクセラピー(化粧療法)を行う際、より効果的に実施するために心掛けたいポイントがあります。
本章では、具体的に心掛けたいポイントについて解説します。

4-1.患者の希望をしっかりヒアリングする

メイクセラピー(化粧療法)を実施する場合は、患者と始める前にしっかり話をすることでより効果を高めることができます。
どんなメイクを希望しているのか、どんな風になりたいのか、希望の色や印象を聞き、問題なく実施できる状態か確認し、信頼関係を構築しましょう。

4-2.複数人でメイクセラピー(化粧療法)を実施する

複数人でメイクセラピー(化粧療法)を実施すると、患者も楽しみながら受けることができます。
施設や病棟のレクリエーション活動の一環、コミュニケーション活性化の手段として利用すると、患者の社会生活の維持、参加のきっかけにもなり有効な手段となります。

4-3.美容のプロのアドバイスを取り入れる

美容のプロである化粧品販売部員や、メイクセラピストにアドバイスを求めるのも一案です。 
最新のメイク法や患者に合った色選び、肌状態に応じたセルフケアなど、プロが持つ豊富な知識を取り入れることによって、より患者に有益な時間を提供することができるでしょう。

5.メイクセラピストとは?どうやったらなることができる?

メイクセラピストは、メイクアップの技術と心理学の知識を組み合わせ、患者の心理的なケアや自己実現をサポートする専門家です。

メイクセラピストになるために最もおすすめの方法は、メイクの専門学校や美容専門学校で学ぶことです。専門学校によっては、美容師資格取得だけでなく、メイクセラピスト養成コースを開講している学校もあるため、調べてみるといいでしょう。

また、メイクセラピストには「メイクセラピー検定」の特級の取得が望ましいとされています。

メイク関係の経験者でない限り、独学では合格するのが難しいとされていることも、専門学校での勉強が望ましいとされる理由の1つです。

メイクセラピー検定概要

参照:一般社団法人メイクセラピストジャパン「メイクセラピー検定」

6.メイクセラピストを目指すのにおすすめの資格5選

メイクセラピストを目指す上で、取得することによって化粧品の知識や患者とのコミュニケーションなどで役立つカウンセリングや心理学の知識を高めることができる資格が存在します。
本章では、メイクセラピストとして持っておくといい資格を5つ紹介します。

・メイクセラピー検定

メイクセラピー検定は、色彩学をはじめ心理学・メイク理論など幅広い知識を総合的に測るための検定で、メイクセラピストとして持っておきたい知識やスキルが総合的に出題されます。
メイクセラピストとして活躍するためには特級取得が望ましいですが、2級までは受験資格は特にないため、誰でも受験することが可能です。

参照:一般社団法人メイクセラピストジャパン「メイクセラピー検定」

・日本メイクアップ技術検定試験3級

日本メイクアップ技術検定試験は、一般社団法人JMAが定める正しいメイク基準を基本に技術力、接客力、知識を問う試験です。1級~3級まで3段階あります。
3級は誰でも受験可能ですが、2級は3級取得者または2級と同時受験者が対象となります。

参照:一般社団法人JMA「日本メイクアップ技術検定試験」

・日本化粧品検定

日本化粧品検定は、化粧品に関する幅広い知識を問う検定です。
3級から特級まで5段階あり、3級はオンラインで受験可能なため、仕事の合間にテキストを購入して勉強することも可能でしょう。

参照:一般社団法人日本化粧品検定協会「日本化粧品検定」

・こころ検定

こころ検定は、一般財団法人日本こころ財団が実施する検定です。
「こころと向き合う力」「こころを成長させる力」「こころに触れる知識とテクニック力」「こころを援助する知識とテクニック力」「心理学を通じた自己実現力」を身に付けることを目的としています。

メイクセラピーを実施する際、メイク技術だけでなく患者の心理的ケアも要求されるため、心理学に基づいた知識を学ぶことは、メイクセラピストのみならず、看護領域でも役に立つでしょう。

参照:一般財団法人日本こころ財団「こころ検定」

・メンタルケアカウンセラー

メンタルケアカウンセラーは、メンタルケア学術学会が認定する公的資格です。指定された学校の講座で学び、修了認定テストに合格すると認定されます。
メイクセラピストとしてカウンセリングを行う基礎心理学のスキルを身に付けるのに役立ち、看護や福祉領域のみならず、各種カウンセラーなどが多く受験しています。

参照:メンタルケア学術学会「メンタルケアカウンセラー」

7.メイクセラピストの役割と活躍する場所

メイクセラピストが活躍している場所は多岐に渡ります。
本章では、メイクセラピストが働く場所と、それぞれの場所で求められる仕事内容や役割について紹介します。

・医療機関(皮膚科・形成外科)

患者が怪我や病気による治療痕、皮膚の色素沈着やあざなどをカバーするためのメイクを指導、アドバイスします。
特に顔など衣服で隠せない部分の場合、患者の心理的ダメージも大きくなります。
患者の気持ちに寄り添い、可能な限りその方らしい社会生活を送れるようにサポートすることが求められます。

・介護・福祉施設

主に高齢者を対象にメイクセラピーを実施します。
加齢による外見変化や、老眼によるメイクのしづらさなどから、メイクに対する諦めやためらいを持つ方に対し、肌の状態やなりたい姿を伺いながらメイクをおこないます。

特に手元が若い時ほどうまく動かせない方や視力が落ちている方もいるため、簡単にできるメイク法をアドバイスすると喜ばれるでしょう。
ポジティブな気持ちを取り戻してもらい、生きる力と積極性を持ってもらえるようサポートします。

・エステサロン(美容業界)

美容業界で、高いスキルを活かしてブライダルメイクなどをおこないます。
メイクをする対象となる方は、花嫁や大切な場に出演される方など、様々です。それぞれのクライアントの要望をコミュニケーションから汲み取り、希望通りのメイクを施すやりがいと経験を積むことが可能となります。

・就活や婚活などのアドバイザー

就活や婚活など大切な人生の転機を乗り越えられるよう、メイクセラピストの技術を駆使してその方らしいメイクをアドバイスします。
就活では業界や職種に合わせたメイク、婚活が成功するように清潔感とクライアントの良さを活かしたメイクを提案し、実力を発揮できるようサポートすることが求められるでしょう。

・美容部員(化粧品メーカー)

美容部員として各メーカーの販売カウンターで来店客にアドバイスをしたり、化粧品メーカーで美容部員の指導をおこなったりします。
所属する化粧品メーカーの商品知識に加え、高いメイク知識を活かして活躍することができるでしょう。

・講師(専門学校または講座)

メイクアップ関連の専門学校や講座で、講師として後進の指導をおこないます。
メイクセラピストとして身に付けた知識や経験を存分に活用し、資格試験に向けたサポートや就職アドバイスなどを求められるケースが多いでしょう。

8.実際にメイクセラピストとして働く方の声

メイクセラピストとして活躍する方の中には、様々なキャリアを経てからなったというケースもあります。本章では、実際にメイクセラピストとして働いている方の声を紹介します。

8-1.高齢者看護を経た後メイクセラピストに

高齢者が多い病院でエンゼルメイクをする機会はありましたが、急性骨髄性白血病の70代の女性患者と出会い、生きている間に闘病等で変わっていく外見に対するケアという視点に気付きます。さらに、実習に来た看護学生がメイクセラピーをおこなったことで化粧ケアの重要性に着目しました。

その後、出産育児を経て、自分自身も化粧の力を感じたことから、メイクセラピストとして起業しました。最初はボランティアから始め、現在は少しずつ活躍の場を広げています。
メイクによって患者が自信や笑顔を取り戻し、生き生きとした表情を見せる場面に立ち会うことで、化粧の力を実感し、より多くの方へ自信と笑顔を届けています。

参照:PRTimes STORY「看護師から起業へ。超高齢社会での「美とケア」を再定義する新たなサービス「Rings Care」誕生秘話」

8-2.メイクセラピー外来で働く

看護師として総合病院の形成外科で働く傍ら、元々メイクが好きでプライベートでエンゼルメイクのみならずメイクセラピストの勉強し、資格を少しずつ取得していました。

看護師とメイクどちらも好きで、どちらか一方ではなく両方を活かせる職場を探していたところ、大学病院にメイクセラピーを専門とする外来があることを知り、転職したのです。

実際に患者の皮膚状態を見極めながらメイク指導を行い、患者自身が自宅でできる内容を提案すると喜ばれ、「毎日が楽しくなりました」と言っていただけるなど、大きなやりがいを感じながら働いています。

9.まとめ

以上、メイクセラピー(化粧療法)の概要や実施することで得られる効果、実施する際の注意点や、メイクセラピストになる方法、働く場所などについて解説しました。

メイクセラピーの注目度の高まりと同時に、今後メイクセラピストが活躍できる場が広がっていくことも期待され、看護師のスキルアップの1つとして考える方も出てくるのではないでしょうか。

この記事が、メイクセラピーやメイクセラピストの理解を深める一助となれば幸いです。

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