• #ナースプラクティショナー(診療看護師)

ナースプラクティショナー(診療看護師)ってどんな仕事?看護師との違いも解説

診療看護師

医療の高度化や少子高齢化による労働力不足など様々な要因により、医療現場は負担増大の一途をたどっています。

そんな中、医療現場のタスクシフトや、さらなる高齢化と労働人口の減少による医療ニーズの拡大に貢献できる人材として、医師に代わって一定レベルの診療を担当できるナースプラクティショナー(診療看護師)が注目されるようになってきました。

仕事として非常にやりがいがあり、看護師の中にはキャリア選択の1つとして気になっている方もいるでしょう。しかし、実際に資格を得るためには臨床経験や既定の教育課程の履修、試験合格が必要なため、なかなか踏み出せない方もいるようです。

この記事では、ナースプラクティショナー(診療看護師)の仕事内容やなる方法だけでなく、活躍する場所などについて解説します。

1.ナースプラクティショナー(診療看護師)とは?

ナースプラクティショナー(診療看護師)は、医師と連携して一定の診療行為を行う看護師です。医師不在の際でも、迅速かつ安全な医療を提供できるよう、あらかじめ作成された手順書に基づいて診療を行います。

ナースプラクティショナー(診療看護師)は、英語のNurse Practitionerを省略し、NPとも呼ばれます。アメリカなど諸外国では公的資格となっていますが、日本では内閣府の規制改革推進会議で議論中の段階であり、現時点で国家資格とはなっていません。

現在日本では、民間資格として日本NP教育大学院協議会が認定する「診療看護師(NP)」と日本看護系大学協議会が認定する「ナースプラクティショナー(JANPU-NP)」の二つがあります。

1-1. ナースプラクティショナー(診療看護師)の勤務先と雇用形態

ナースプラクティショナー(診療看護師)が勤務している機関は病院が最も多く、ほかに診療所や訪問看護ステーションなどが続きます。大半のナースプラクティショナー(診療看護師)は常勤が96%となっています。

診療看護師の勤務先と雇用形態

参照:厚生労働省「診療看護師とは?(NP:ナースプラクティショナー)
参照:日本看護協会「ナース・プラクティショナー(仮称)制度の創設に向けた日本看護協会の考えについて」
参照:日本NP教育大学院協議会「令和6年度 診療看護師(NP)活動実態調査報告」

2.ナースプラクティショナー(診療看護師)が注目されている背景

ナースプラクティショナー(診療看護師)への注目が高まっている背景には、高齢化に伴う医療ニーズの多様化と医療の複雑化が挙げられます。
医師の負担軽減と医療の質向上が緊急の課題となる中、ナースプラクティショナー(診療看護師)は特定行為を含む幅広い医療行為を医師の包括的指示の下で行うことができ、医療現場のタスクシフトに大きく貢献します。

例えば、慢性疾患管理や軽微な外科的処置、急変時の初期対応など、これまで医師が行ってきた業務をナースプラクティショナー(診療看護師)が担うことで、医師はより専門性の高い業務に集中できます。
また、多職種との連携においても、ナースプラクティショナー(診療看護師)は患者の状態を包括的に理解し、円滑な情報共有とチーム医療を推進する重要な役割を果たします。

さらに、在宅医療や地域包括ケアにおいては、医師が常駐しない場面での迅速かつ適切な判断と処置が求められます。高度な臨床判断能力と実践力を持つナースプラクティショナー(診療看護師)は、このような状況下で患者とその家族にとって不可欠な存在となり、その需要は増加の一途を辿っています。

関連する記事はこちら▼
タスク・シフト/シェアで今後こそ業務改善!対象業務・課題・導入事例

3.ナースプラクティショナー(診療看護師)と特定看護師の違い

ナースプラクティショナー(診療看護師)と特定看護師は、どちらも高度な看護実践能力を持つ看護師ですが、資格の種類、役割、業務範囲などに違いがあります。

 ナースプラクティショナー
(診療看護師)
特定看護師
資格          日本NP教育大学院協議会が認定する民間資格です。

大学院修士課程を修了し、認定試験に合格する必要があります。5年ごとの更新が必要です。  
特定の資格ではなく、厚生労働省の研修制度を修了した看護師の通称です。

研修を修了した区分のみ、特定行為を行うことができます。資格の更新は不要です。  
業務範囲特定行為に加え、医師の直接指示による相対的医行為も行うことができます。
特定行為の全区分を実施可能です。  
研修を修了した区分に限定された特定行為のみを行うことができます。  

ナースプラクティショナー(診療看護師)と特定看護師の最大の違いは、行える業務範囲の差です。

ナースプラクティショナー(診療看護師)は、診療看護師の教育課程を修了した大学院のカリキュラムに含まれている「特定行為」を実施することが可能です。また、医師からの具体的な直接指示があれば特定行為を以外の「相対的医行為(例:腹腔穿刺、気管内挿管 など)」を行えます。

それに対し、特定看護師は特定行為(38行為21区分)の中から研修を修了した区分に限って特定行為を行うことができ、医師の指示のもと前もって作成された手順書にある「包括的指示」に対応することができます。そのため、ナースプラクティショナー(診療看護師)のように「相対的医行為」はできません。

特定行為区分

しかし、どちらの看護師も医師の指示を待たなくては行えなかった特定行為をタイムリーに提供できるため、医師の負担軽減につながっています。

参照:厚生労働省医政局看護課「特定行為に係る看護師の研修制度について」

関連する記事はこちら▼
今、医療現場で「特定看護師」が活躍している?行えること・なる方法を解説
特定行為研修制度とは?修了者ができること・目的・医師側のメリットを解説

診療看護師と他の看護師資格との違いをもっと知りたい方はこちら▼
看護のエキスパート「認定看護師」とは?専門看護師との違い・なる方法を解説
専門看護師とは?役割や認定看護師との違い、資格取得の条件や費用まで解説!

4.ナースプラクティショナー(診療看護師)になるには?

本章では、実際にナースプラクティショナー(診療看護師)になるための方法などを詳しく説明していきます。

診療看護師になる方法

ステップ1:看護師として5年以上の臨床経験
ステップ2:大学院に入学
ステップ3:資格認定試験を合格
ステップ4:資格の登録

さっそく、ひとつひとつのステップの内容を細かくみていきましょう。

4-1.5年以上の臨床経験を積んで大学院へ入学する

ナースプラクティショナー(診療看護師)の資格は2種類あり、どちらの資格取得を目指すかを決め、大学院に進学する必要があります。

どちらの大学院を選択した場合も、受験資格として看護師の臨床経験5年以上が求められます。

【ナースプラクティショナー(診療看護師)の資格2種】

・日本NP教育大学院協議会「診療看護師(NP)」
日本NP教育大学院協議会が認定したNP教育課程がある大学院に進学し、養成コースを修了する

・日本看護系大学協議会「ナースプラクティショナー(JANPU-NP)」
日本看護系大学協議会に認証されたプライマリケア看護専攻教育課程がある大学院で所定の 単位(46単位以上)を修得する

「海外のNP資格取得者」「国内外で同等以上の教育を認められた者」であれば、大学院へ入学せずともナースプラクティショナー(診療看護師)の資格試験を受けることも可能です。

詳しくは各団体のホームページで確認できますので事前に情報収集しましょう。

4-2.資格認定試験を受け、合格後に資格登録をする

大学院修士課程を修了後、各団体が実施する認定試験を受験します。

 日本NP教育大学院協議会                             
「診療看護師(NP)」 
                 
日本看護系大学協議会
「ナースプラクティショナー(JANPU-NP)」
試験内容筆記試験のみ

試験要項はこちら▼
令和6年度 第15回NP資格認定試験 試験要項
書類審査+面接

試験要項はこちら▼
2025 年度 日本看護系大学協議会 ナースプラクティショナー(JANPU-NP) 資格認定審査 募集要項
資格認定者数             
(2024年現在)
984名15名
受験料30,000円51,700円
認定料(合格後)10,000円51,700円
更新料22,000円51,700円
(更新審査料+更新認定登録料)

試験に合格し、登録することで、それぞれ診療看護師(NP)やナースプラクティショナー(JANPU-NP)として認定されます。

どちらの資格も5年ごとに更新する必要があります。更新の際には、ナースプラクティショナー(診療看護師)としての実践時間や実践報告書、所定の研修や学会への参加などが求められるため、確認を忘れないようにしましょう。

5.ナースプラクティショナー(診療看護師)になるために必要なお金

ナースプラクティショナー(診療看護師)になるためには、大学院での学費や受験料など、いくつかの費用がかかります。
必要な費用について詳しく解説します。

5₋1.費用を抑えるためにできること

大学や地方自治体、民間団体などが提供する奨学金制度を利用することで、学費の負担を軽減できます。

また、ナースプラクティショナー(診療看護師)の養成課程は、専門実践教育訓練給付金の対象となる場合があります。教育訓練給付金制度は、厚生労働大臣が指定した専門的・実践的な教育訓練を修了した場合に、受講費用の一部が支給される制度です。

看護師資格を目指す場合と同様、様々な奨学金制度や助成金・給付制度がありますので、関連記事も参考してみてください。

関連する記事はこちら▼
看護師を目指す際に利用できる奨学金・助成金・給付制度とは?条件や内容を解説

5-2.大学院の学費

ナースプラクティショナー(診療看護師)になるためには、日本NP教育大学院協議会や日本看護系大学協議会が認定した大学院の修士課程を修了する必要があります。

大学院の学費は、国立大学か私立大学かによって大きく異なります。一般的に、2年間の学費は150万円~300万円程度が目安となります。入学金、授業料、実習費などが含まれます。

学費以外にも参考書や教材費や大学院によっては実習費などが別途必要になる場合もあります。大学院に通うための交通費や生活費も考慮する必要があります。

5₋3.ナースプラクティショナー(診療看護師)認定試験の受験料と更新料

大学院修士課程修了後、ナースプラクティショナー(診療看護師)の資格認定試験を受験する必要があります。

 日本NP教育大学院協議会  
診療看護師(NP)
日本看護系大学協議会
ナースプラクティショナー(JANPU-NP)
受験料30,000円51,700円
認定料(合格後)     10,000円51,700円
更新料22,000円51,700円(更新審査料+更新認定登録料)

また、ナースプラクティショナー(診療看護師)の資格試験の実施場所は年によって変わります。2024年は愛知県名古屋市での開催でした。実施会場によっては、宿泊費や交通費が必要です。

6.ナースプラクティショナー(診療看護師)についてよくある質問

ナースプラクティショナー(診療看護師)についてよくある質問について、まとめました。

Q1. ナースプラクティショナー(診療看護師)の年収はどれくらいですか?

ナースプラクティショナー(診療看護師)の年収に関する正確な統計データは、現在のところ公的な調査としては発表されていません。

看護師の平均年収は勤務先規模や地域などによりますが、令和6年の厚生労働省の調査によれば、看護師全体の平均年収は5,178,900円です。

これらの給与にプラスして、「令和6年度 診療看護師(NP)活動実態調査報告」では、診療看護師(NP)の資格手当があると約7割の方が回答しています。

診療看護師の給与

資格手当の金額にもよりますが、資格手当も含めた給与は、一般的な看護師より高い水準にあると考えられるでしょう。
役職が付いた場合は、より高い年収を得ることができると推測されます。

参照:日本NP教育大学院協議会「令和6年度 診療看護師(NP)活動実態調査報告」
出典:厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」
※企業規模計10人以上のデータを使用
※年収算出方法:月額給与(きまって支給する現金給与額)×12+賞与(年間賞与その他特別給与額)

Q2. ナースプラクティショナー(診療看護師)になることで、どのようなメリットがありますか?

ナースプラクティショナー(診療看護師)になるメリットは、看護師としてのキャリアを大きく飛躍させる選択肢が広がることです。

【具体的なメリット】

・高い専門性と自律性の向上によって高度な医療行為が可能になり、自律的に患者ケアに取り組める
・キャリアパスの広がりと同時に、給与水準の向上が期待できる
・医師との協働を深め、質の高い医療提供に貢献できる
・迅速かつ適切な処置を行えるため、やりがいや充実感を感じることができる

Q3.ナースプラクティショナー(診療看護師)になるデメリットはどんなことでしょうか?

ナースプラクティショナー(診療看護師)への道は、専門性向上とキャリアアップの機会となる一方で、大学院へ通うなどの研修の時間や経済的負担は大きくなるでしょう。
特定行為を行う責任は重大で、自分が行った行為が患者に大きく影響するという精神的な負担も増すと考えられます。
職場によっては役割が曖昧な場合や、法的責任が不明確な点もあります。また、資格は5年毎に更新となるため、決められた学会や研修に働きながら参加する必要もあります。
常に学び続ける必要があるため、負担が大きいと感じる方もいるようです。

Q4. ナースプラクティショナー(診療看護師)の難易度はどれくらいでしょうか?

ナースプラクティショナー(診療看護師)資格認定試験は、大学院で学んだ広範な専門知識が問われ、難易度は高いと言われています。

合格率などの公式データは公開されていませんが、合格者の決定は評価委員会の審議によって行われるため、決して容易ではないと言えるでしょう。

Q5. ナースプラクティショナー(診療看護師)になった方の声は?

診療看護師(ナースプラクティショナー(診療看護師)として働く中で、患者の治療だけでなく、生活背景やQOL(生活の質)の向上にも深く関わることができ、患者の声を治療に反映させて継続的に関わることで信頼関係を築き、より質の高いケアを提供できることに対するやりがいを感じるという声がありました。

また、医師や他の医療従事者と対等な立場で意見交換や連携を行い、チーム医療の質の向上に貢献できたという意見もあります。何より、自律的に判断し、タイムリーな処置を行うことができ、看護師としての裁量権と責任の大きさ、患者の状態改善に直接的に貢献できることで、看護師としての専門職としての誇りと大きなやりがいを感じることができます。

参照:日本NP学会「現役診療看護師(NP)の声」

7.まとめ

この記事では、ナースプラクティショナー(診療看護師)の仕事内容や資格取得方法・やりがいなどについて包括的に解説しました。

看護師としてのキャリアには、他にも認定看護師や特定看護師など、様々な選択肢がありますが、その中でナースプラクティショナー(診療看護師)はより高い専門性とスキルを発揮しながら、医療に携われる魅力ある資格と言えるのではないでしょうか。
この記事が、ナースプラクティショナー(診療看護師)への理解の一助となれば幸いです。

ワンナース one-nurse Instagram

relation

関連記事

ranking

人気ランキング

recommend

ワンナースおすすめの記事

Nurse Life, Your Way.

Nurse Life, Your Way.

Nurse Life, Your Way.

Nurse Life, Your Way.