看護師の専門性を活かす「アレルギーエデュケーター」になるには?注目が集まる理由と働き方を解説

小児アレルギーエデュケーター

最近、子どものアレルギーが増えてきており、その医療ニーズも高まっています。ただ単に病気の診断や治療をするだけではなく、子どもやその家族が安心して毎日の生活を送れるようにサポートすることが求められています。

このような状況の中で「小児アレルギーエデュケーター(PAE)」の役割がますます重要になっています。小児アレルギーエデュケーター(PAE)は、医師と協力して、子どもたちやその家族に生活の指導をしたり、自分でケアする方法を教えたりする役目を担っています。

この記事では、小児アレルギーエデュケーター(PAE)の役割や仕事内容、認定までの流れ、メリットや活躍の場などについて詳しく解説します。

1.小児アレルギーエデュケーター(PAE)とは

小児アレルギーエデュケーター(PAE:Pediatric Allergy Educator)は、日本小児科臨床アレルギー学会によって認定される専門資格を持ったコメディカルスタッフであり、小児アレルギー疾患に関する高度な知識と指導技術を有することが認められた看護師・薬剤師・管理栄養士に与えられる資格です。

アレルギー疾患の長期的な管理には、医師による治療だけでなく、家庭での正しいセルフケアの実践が極めて重要とされています。小児アレルギーエデュケーター(PAE)は、患者とその家族に対して小児アレルギー疾患のセルフケアに関する指導や教育の役割を担い、適切な治療と管理を支援します。

医療機関や薬局だけでなく、地域のアレルギー啓発イベントや保育・学校現場などでも活躍しており、2022年度までに全国で668名が認定されました。

小児アレルギーエデュケーター(PAE)は、アレルギー疾患と向き合う家族にとって身近で信頼できる専門家の1人として、今後ますます存在価値が高まるでしょう。

参考:日本小児臨床アレルギー学会「エデュケーター制度」

2.小児アレルギーエデュケーター(PAE)の仕事内容

小児アレルギーエデュケーター(PAE)は、子どものアレルギー疾患について詳しい知識を持ち、具体的な指導を行います。

医師や保護者、学校と連携して、子どもたちの健康をサポートする役割を担っています。

主に対象となるのは、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息の3つです。これらの疾患や症状に対しての指導は下記の点に配慮しながら進めます。

代表的な3疾患への指導方法

アトピー性皮膚炎
小児アレルギーエデュケーター(PAE)は、軟膏の塗り方や体の洗い方について、実際に動作を見せながらわかりやすく指導します。

気管支喘息
吸入ステロイド薬の使い方や補助器具の使用方法、発作を防ぐための環境づくり(ダニやホコリ対策など)について伝えます。これらの情報は、保護者だけでなく、学校や園の職員にも教えます。

食物アレルギー
誤って食べてしまった時のためにエピペンの使い方や安全に食べられる代替食品の提案を行います。さらに、給食への対応のために学校や保育園と連携します。

また、子どもの症状が改善した時に薬を調整したり、行動療法を通じて子ども自身が自分でケアできるようにサポートすることも重要な役割です。

看護師として、こうした幅広いサポートを通じて、子どもたちのより良い生活を支えることができます。

3. <PAE需要増の背景>アレルギーを持つ小児の増加

アレルギーを抱える小児は年々増加していますが、代表的なアレルギーやそれらの罹患率はどのようになっているのでしょうか。また、小児アレルギーエデュケーター(PAE)の需要は高まっているのでしょうか。

ここでは、代表的な小児アレルギー疾患と小児アレルギーエデュケーター(PAE)が求められる理由について解説します。

3-1.代表的な小児アレルギー

現代の子どもたちは、環境や食生活の変化が影響し、アレルギーの種類や発症年齢も多様化しています。ここでは、近年の小児に多く見られるアレルギーの代表例を紹介します。

アレルギーの代表例

・気管支喘息(喘息)
・アレルギー性鼻炎(花粉症)
・アレルギー性結膜炎
・アトピー性皮膚炎
・じんましん(蕁麻疹)
・食物アレルギー
・アナフィラキシー

気管支喘息は2000年頃まで小学生の有症率が増加傾向にありましたが、現在は減少傾向にあります。一方で、アレルギー性鼻炎やアレルギー性結膜炎、花粉症は最も罹患率が上昇しています。

食物アレルギーの増加も顕著で、2019年に東京都が実施した3歳児調査では「症状あり」が17.8%、「診断あり」が14.9%と報告されています。さらに、全国の公立小中高校では、食物アレルギーを持つ児童生徒が約52万7千人にのぼり、前回調査(2013年)から約12万人の増加が確認されました。

このように、小児のアレルギー性疾患は増加の一途をたどっており、医療現場ではその対応が大きな課題となっています。

出典:ヨミドクター「食物アレルギーのある小中高生 9年間で1.3倍に…原因となる食べ物で最も多いものは?」
出典:日本アレルギー学会「患者さんに接する施設の方々のためのアレルギー疾患の手引き《2022年改訂版》」

3-2.小児アレルギーエデュケーターが必要とされる理由

小児アレルギー疾患(気管支喘息、食物アレルギー、アトピー性皮膚炎など)は、長期的な管理が必要な慢性疾患であり、薬の使い方やスキンケア、家庭や学校での生活の配慮など、患者や家族が理解・実践すべき内容が多岐にわたります。

しかし、診察時間内に医師がこれらすべてを十分に説明するのは難しく、情報が伝わりきらないことがあります。

そのような際に、小児アレルギーエデュケーター(PAE)は医師の診断や治療方針の説明に加え、患者や家族が疾患を正しく理解し、適切に管理できるようにサポートします。

さらに、2014年に公布された「アレルギー疾患対策基本法」第16条および第18条では、アレルギー疾患医療に携わる専門的な知識や技能を持つ医師、薬剤師、看護師などの医療従事者の育成について、国として必要な施策を講じることが定められています。

このように、小児アレルギーエデュケーター(PAE)の育成と活躍は法的にも認められており、今後の小児アレルギー医療に欠かせない存在となっています。

出典:厚生労働省「アレルギー疾患対策基本法 」
出典:日本小児アレルギー学会「一般の皆様へ」

4.小児アレルギーエデュケーター(PAE)になるには

小児アレルギーエデュケーター(PAE)として認定を受けるためには、所定の条件を満たしたうえで、段階的な研修・試験・審査を経る必要があります。

ここでは、小児アレルギーエデュケーター(PAE)になる方法について解説します。

4-1. 受験資格

小児アレルギーエデュケーター(PAE)として認定を受けるためには、認定小児アレルギーエデュケーター試験に合格する必要があります。

認定小児アレルギーエデュケーター試験の受験資格は、下記すべてを満たした場合に得られます。

PAE認定申請の条件

認定小児アレルギーエデュケーター試験を受験するには、4年以上の臨床経験が必要になっています。

また、指導医よりアレルギー診療に関する指導を受けた経験などを要するなど、細かい要件があるので詳しくは「日本小児臨床アレルギー学会のホームページ」をご確認ください。

4-2.資格取得までの流れ

前述した受験資格を満たすことで、認定小児アレルギーエデュケーター取得のための1ステップ目に進むことができます。

認定小児アレルギーエデュケーター試験は下記の流れで構成されており、ステップ1から順にクリアしていく必要があります。

各ステップにも受講や受審などの条件がありますのでご覧ください。

STEP
オンライン基礎講習(オンデマンド配信)

例年5月に開催される講義で、日本小児臨床アレルギー学会会員であること、または受講する年度からの入会手続きを完了している必要があります。

STEP
PAE受験講習会(東京・大阪で実施予定)

演習、グループワークが中心になっています。オンライン基礎講習を申込年を含む2年以内に受講している必要があります。

STEP
筆記試験(CBT方式)

PAE受験講習会を申込年を含む3年以内に受講している必要があります。

STEP
レポート審査

申込年を含む3年以内に筆記試験に合格している必要があります。筆記試験の終了後に、所属施設で2回以上介入した患者の症例報告を提出します。

STEP
認定申請

申請年度を含む2年以内にレポート審査に合格している必要があります。

小児アレルギーエデュケーター(PAE)の資格は5年ごとの更新制です。再度、レポート審査を受けて合格したうえで認定申請を行う必要があります。

参考:一般社団法人 日本小児臨床アレルギー学会認定「2025 年度PAE認定制度 試験実施要項」

5.小児アレルギーエデュケーター(PAE)についてのよくある質問

PAE(小児アレルギーエデュケーター)の資格に興味を持った方の中には、「取得することでどんなメリットがあるのか?」「どのくらいの時間や費用がかかるのか?」といった具体的な疑問を抱える方も多いでしょう。

ここでは、PAEに関するよくある質問に回答します。

Q1.PAE認定を受けるとどんなメリットがありますか?

小児アレルギーエデュケーター(PAE)として認定を受けることで、医師や他の医療スタッフと連携しながら、アレルギー疾患を持つ子どもたちとその家族を多面的に支援できる立場となります。

薬剤師、看護師、管理栄養士としての専門知識を、患者支援や指導実績へと直接つなげられる点が、PAE資格の大きな特徴です。

一例として、看護師であれば、医師の診断や治療方針に基づいて、患者や家族が日常生活の中で適切なケアを実践できるよう、スキンケアや吸入指導、除去食の取り扱いなどについて丁寧に説明・指導を行い、患者のQOL(生活の質)向上につなげることができます。

ご家族にとっては、日々の不安や疑問に応えてくれる存在として信頼され、「ありがとう」と感謝される場面も少なくありません。

また、PAEは医療現場だけにとどまらず、学校や地域に出向いて啓発活動や講演を行うこともあります。アレルギーに対する正しい理解を社会に広げ、子どもたちが安心して暮らせる環境を整える支援にもつながります。

Q2.PAE認定を受けるためには、時間や費用はどのくらいかかりますか?

PAE認定の取得には、おおよそ1年弱の期間がかかりますが、前提条件として一定以上の臨床経験年数が別途必要です。また、費用は10万円程度です。

2025 年度 小児アレルギーエデュケーター(PAE)認定取得のスケジュールを紹介します。

ステップ実施時期費用(税込)
1.オンライン基礎講習2025/5/1~8/25(会 員)33,000円
(非会員)38,500円
2.PAE受験講習会2025/7/6
(申込:2025/5/1正午~5/15正午まで)
22,000円
3.筆記試験2025/9/7
(申込:2025/7/14正午~7/28正午まで)
結果通知:2025/10月上旬
11,650円
4.レポート審査提出締切:2025/2/27
(レポート審査申込:2025/10月中旬~)
合格者発表:2026/5月中旬
11,000円
5.認定申請認定手続き締切:2026/5/2722,000円

費用については年度によって若干の変動があります。

参考:日本小児臨床アレルギー学会「2025年度PAE認定制度 試験実施要項」

Q3.小児アレルギーエデュケーター(PAE)はどのような職場で活躍していますか?

2024年5月時点で、全国に600人以上の小児アレルギーエデュケーター(PAE)が認定されており、それぞれの現場でアレルギーを持つ子どもや家族の支援に尽力しています。

主な勤務先は、アレルギー疾患の専門病院やアレルギー拠点病院をはじめ、総合病院、一般クリニック、調剤薬局、大学などの教育機関などです。

さらに、地域で開催されるアレルギーに関する啓発イベントや保育園・学校での健康指導、他団体との連携事業などにも積極的に関わっています。近年では、専門医の少ない地域においても、小児アレルギーエデュケーター(PAE)が地域住民に寄り添った情報提供や指導を行うことで、医療の質の地域間格差を埋める存在としても期待されています。

参考:日本小児臨床アレルギー学会「2025年度PAE認定制度 試験実施要項」

6.まとめ

小児アレルギーエデュケーター(PAE)は、専門的な知識と実践力をもって、小児アレルギー患者とその家族を支える資格です。

年々増加する小児アレルギー疾患に対し、医師だけでは対応しきれない現場のニーズに応える形で、小児アレルギーエデュケーター(PAE)は日常生活に寄り添ったケアや、保育・教育現場との連携を通じて、安心して暮らせる環境づくりを支援します。

アレルギーケアに携わる専門職として一歩踏み出したい方は、ぜひ小児アレルギーエデュケーター(PAE)という選択肢を検討してみてください。

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