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専門看護師とは?役割や認定看護師との違い、資格取得の条件や費用まで解説!

看護師としてのキャリアを積み重ねる中で、さらなる専門性や高度な看護実践能力を身につけたいと考えている方も多いのではないでしょうか。そんな看護師に対してキャリアアップの選択の一つとして「専門看護師」があります。

専門看護師は、特定の分野において卓越した看護実践能力を持つスペシャリストとして認められた資格です。しかし、2022年12月時点での認定者数は3,155人と、決して多くはありません。

そこでこの記事では、専門看護師の役割や認定看護師との違い、資格の取得方法や費用をはじめメリットについて紹介します。専門看護師を目指すことで広がる看護師のキャリアパスについて、一緒に考えていきましょう。

1.専門看護師とは

専門看護師(CNS)は、複雑で解決困難な看護問題を持つ個人・家族・集団に対して、水準の高い看護ケアを効率よく提供するための知識や技術を深め、特定の看護分野において卓越した看護実践能力を持つスペシャリストとして日本看護協会が認定する資格です。英語では「Certified Nurse Specialist(CNS)」と表記されます。

1−1.専門看護師の6つの役割と活動内容

専門看護師には次の6つの役割があり、これらを通じて高度な看護実践を行うとともに、看護ケアの質の向上や看護学の発展に貢献しています。

1.実践

個人、家族及び集団に対して卓越した看護を実践します。患者やその家族は複雑で対応が困難な課題を抱えています。どのような看護が必要か判断する上で、患者の病気と関連する不安や葛藤など、様々な要因を総合的に捉えることで判断し、最適な看護を実践していきます。

2.相談

専門知識を活かし、看護師や他の医療職の相談に対してアドバイスを行います。例えば、患者やその家族によりよい看護を行うための関わり方など提案することで問題解決の支援を行います。 

3.調整

療養の場が変わっても必要な医療を円滑に受けられるよう、多職種・多施設間の連携を推進します。例えば、患者が病院から自宅へ移行する際、医師、看護師、地域の訪問看護ステーション、ケアマネジャーなど、様々な職種・施設に働きかけて調整を行います。

4.倫理調整

治療方針の決定など倫理的問題が生じやすい場面に関わり、患者・家族の意思を尊重した治療や療養が行えるよう支援します。具体的には、他の看護師や医師など、関係する人々に働きかけ、患者・家族の思いが十分に考慮されるよう取り組みます。

5.教育

専門的な知識や技術に基づき、他の看護師に対して教育を行います。これにより、施設全体や地域の看護の質の向上に貢献します。例えば、最新のエビデンスに基づいた看護ケアについて院内研修を実施するなどの取り組みが挙げられます。

6.研究

日々の看護実践における課題を研究対象として捉え、探求します。研究成果を実践に還元することで、看護の質の向上に貢献します。例えば、特定の看護介入の効果を検証し、その結果を臨床現場に導入することで、より効果的な看護ケアの提供につなげます。

このように専門看護師は看護技術のみではなく、幅広い範囲の知識や経験が必要になります。また、これらの役割を果たすことで、施設全体や地域の看護の質を支えています。

参照:専門看護師 _ 看護職の皆さまへ _ 公益社団法人日本看護協会

1−2.専門看護14分野

助成対象となる専門分野は以下の14分野です

・がん看護 ・精神看護 ・地域看護 ・老人看護 ・小児看護
・母性看護 ・慢性疾患看護 ・急性・重症患者看護 ・感染症看護
・家族支援 ・在宅看護 ・遺伝看護 ・災害看護 ・放射線看護

※専門分野は、社会のニーズや医療の進歩に応じて適宜見直されています。各分野の詳細な説明や最新の情報については、日本看護協会のホームページをご覧ください。

専門看護師は、14の専門看護分野において、先に述べた6つの役割を果たしながら、複雑化・高度化する医療現場で質の高い看護ケアの提供と看護の発展に貢献しています。各分野の特性を活かしつつ、患者や家族、そして医療チーム全体をサポートします。

参照:専門看護師 _ 看護職の皆さまへ _ 公益社団法人日本看護協会

2.認定看護師との違い

下表で専門看護師と認定看護師の違いをまとめました。

項目専門看護師認定看護師
資格の特徴患者だけではなくその周囲の人たちを含めたケアを行い、人間関係や地域まで幅広くサポートを行う看護のスペシャリスト特定の看護分野の中でもより専門的な領域で高い看護技術を実践するエキスパート
役割【6つの役割】実践、相談、調整、倫理調整、教育、研究【3つの役割】実践、指導、相談
専門分野14分野19分野
登録者数(2023年12月時点)3,316人24,095人
受験資格・5年以上の実務経験
・大学院修士課程修了
・5年以上の実務経験
・800時間の課程修了
教育課程看護系大学大学院修士課程(2年間)認定看護師教育機関での教育課程
学習形態通常、退職して学ぶ必要がある働きながら学べる可能性がある
費用負担150〜300万円程度120万円程度
分野の特徴より広範囲な分野(例:がん看護)より細分化された分野(例:がん化学療法看護、がん性疼痛看護など)
臨床との近さ組織全体や地域レベルでの活動もより直接的な臨床ケアに近い

このように、専門看護師と認定看護師は役割や取得状況が異なります。
専門看護師は認定看護師よりも専門性が高く、資格取得のハードルも高いとされています。

参照:専門看護師 _ 看護職の皆さまへ _ 公益社団法人日本看護協会
参照:認定看護師 _ 看護職の皆さまへ _ 公益社団法人日本看護協会
参照:近藤優子(2015).専門看護師・認定看護師・認定看護管理者の役割と位置づけ-病院図書館,35(2),91-95

3.専門看護師になるには

日本看護協会によると、専門看護師になるには次のステップが必要です。

看護師として5年以上の実践経験を持ち、看護系の大学院で修士課程を修了して必要な単位を 取得した後に、専門看護師認定審査に合格することで取得できる資格です。審査合格後は専 門看護師としての活動と自己研鑽の実績を重ね、5年ごとに資格を更新しています。

『専門看護師ってどんな看護師?』|日本看護協会 より

下記で、資格取得の流れと費用を見ていきましょう。

3−1.資格取得の大きな流れ

専門看護師になるには、下記の受験資格を満たす必要があります。

【専門看護師の受験資格】

・看護師免許を保持している。
・5年以上の実務経験があり、うち3年以上は志願する専門分野での経験している。
・看護系大学院の修士課程で、特定の専門看護師教育課程を修了している。

これらの受験資格を満たした後、専門看護師認定審査を受験することができます。認定審査は毎年10月頃に実施され、書類審査と論述式の筆記試験から構成されています。合格基準は200点満点中140点以上とされています。

認定審査に合格し専門看護師として認定された後も、5年ごとに資格更新が必要です。更新制度を通して、専門看護師は常に最新の知識・技術のアップデートが求められます。

3−2.専門看護師になるためにかかる費用

専門看護師を目指すためにかかる費用は、おおよそ150万~350万円程度が相場です。主に次の3つの費用があります。

1. 大学院での学費

看護系大学院の修士課程2年間の学費です。私立や国立など通う大学院で費用は大きく異なり、私立大学の場合は約330万円、国立大学の場合は約150万円になります。費用の内訳は下記のようになっています。

【私立大学の場合】
・入学金:約40万円
・授業料:約130万円/年
・施設維持費:約15万円/年
計 330万円

【国立大学の場合】
・入学考査料:3万円
・入学金:28万2000円
・授業料:約60万円/年
計 151万2000円

2. 認定審査料

専門看護師認定審査を受けるための費用として、51,700円(税込)が必要です。

3. 認定料

審査に合格した後、専門看護師として認定されるための費用として、さらに51,700円(税込)が必要です。

ただし、資格取得にかかる費用負担を軽減するために、様々な支援制度があります。

例えば、多くの大学院で、3年かけて修了する「長期履修コース」が設けられており、授業料を2年分に抑えることができます。また、一部の医療機関では、看護師のキャリアアップのため、入学金や学費の負担、休職中の基本給支給などの支援制度を設けています。

このほか、日本看護協会、各種団体、都道府県、各大学院が独自に設けている奨学金制度が利用可能です。

こうした支援制度を活用することで、経済的な負担を軽減しつつ専門看護師資格の取得を目指すことができます。

※専門看護師の資格の流れについての最新情報は日本看護協会のホームページをご確認ください。

参照:『2023年度専門看護師教育機関・課程一覧(107大学大学院327教育課程)』|公益社団法人日本看護協会
参照:『1 学生が個人の事情に応じて柔軟に修業年限を超えて履修し学位等を取得する仕組み(長期履修学生)の導入』|文部科学省

関連する記事はこちら▼
看護師を目指す際に利用できる奨学金・助成金・給付制度とは?条件や内容を解説

4.専門看護師になるメリット3つ

専門看護師になるメリットは次の3つがあります。

4−1.専門性の向上によるやりがい

日本看護協会の調査によると、専門看護師を目指した主な動機として、82.9%が「専門性を深めたい」、76.6%が「知識・技術の向上のため」と回答しています。専門看護師を取得するためには、5年以上の実務経験と3年以上志望する専門分野での経験が求められます。そこからさらに、看護のスペシャリストを目指すため、現場の経験だけではなく、大学院で専門的な教育を受けたいと考えている看護師が多いようです。

実際に、専門看護師を取得する際に得た専門的な知識を活かすことで、現場の人材教育や地域社会を含む看護活動を行うことができるなど活躍の場は広がります。病院以外の研修会や外部セミナーに呼ばれるケースもあり、他の医療機関や施設などの関係者との関わる機会も多く、達成感や自身の成長を感じることができます。

また、多様化する医療において、患者やその家族の個々の状況に適した医療の提供が求められています。そのような時に、専門的な知識を用いて、患者や家族の気持ちに寄り添いながら、その意思決定をサポートをしていくこともやりがいにつながります。

さらに、専門看護師の資格を持つ看護師は、他のスタッフからも頼りになる存在です。院内の人材育成に関わることで周囲のスタッフの成長を実感でき、専門看護師としてのモチベーション向上にもつながります。

参照:『2019 年度 専門看護師活動実態調査結果(第1報) 』日本看護協会

4−2.給与・昇進などの待遇アップ

専門看護師資格の取得は、待遇面でもメリットをもたらします。

日本看護協会の調査によると、専門看護師の34.1%が資格手当を受けており、月平均で1万4,471円給与アップしています。

専門看護師は全体の調整・マネジメント能力が高く評価され、昇進・昇格のチャンスが増えます。管理職になれば、基本給アップに加え管理職手当が付き、大幅な年収アップにつながる可能性があります。ただし、待遇面での評価は施設によって異なり、特別な手当や昇給がない場合もあるため、勤務先の状況確認が必要です。

参照:『2022 年度 専門看護師・認定看護師に対する 評価・処遇に関する調査」報告書』 |日本看護協会

4−3.転職に有利

専門看護師は、看護師としてのキャリアアップに大きく役立ちます。高度な専門知識と技術を持っているため、臨床現場だけでなく、産業看護師や研究分野でも活躍の場を広げることができます。

また、通学や実務経験を通じて院内外の人脈が広がりやすく、看護全体のレベルアップに貢献できるだけでなく、自身のキャリアの可能性も大きく広がります。

専門看護師の資格取得は確かにハードルが高いものですが、看護師としての成長と将来性を考えると、大きな価値があるキャリアパスの一つと言えるでしょう。

関連する記事はこちら▼
特定行為研修制度とは?修了者ができること・目的・医師側のメリットを解説

5.まとめ

専門看護師は、看護の質を高め、患者により良いケアを行うための高度な資格です。

専門看護師になるためには専門分野での実務経験や大学院での学習、認定審査など、乗り越えるべき壁がいくつもあります。しかし、資格取得の先には、専門性を活かせる充実したやりがいある仕事や、待遇面のアップ、何より看護のプロフェッショナルとしての大きな成長が待っています。

医療の高度化や患者ニーズの多様化が進む中、専門看護師の役割はますます重要になっていくでしょう。

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